「あー……。今日も、良い、天気だな」
「そ、そうだね。へへ……」
想いが通じ合って、わたしとデュースはお付き合いをすることになった。だけど、以前にも増して、わたし達の会話にはぎこちない沈黙が増えた。
わたしは、わたしが自分で思っている以上に、周囲の注目を集める存在だったらしい。グリムやエース、デュースと楽しく学園生活を送っていたから忘れていたが、そもそもわたしはこの世界の人間ではない。魔法を学ぶ学校なのに、魔法が使えない。男子校なのに、女子である。グリムというモンスターと基本的に二人一組で行動している。考えれば考えるほど、異質で目を引く要素ばかりだ。
だからなのか、わたしがデュースと付き合い始めたことも、あっという間に学園中に広まってしまった。面識のない他のクラスの生徒や先輩からも声を掛けられたり、冷やかされたり、遠巻きに観察されたり、話の種にされたりしている。嫌というわけではないが、どうにも気恥ずかしくて、落ち着かない。
「……一緒に歩くだけでも、緊張しちゃうね」
「あ、ああ……」
周囲の目があるから落ち着かないのだと、部屋で会うのはどうかと提案したことがある。でもデュースの部屋は四人部屋で、ふたりで過ごすからと鍵を掛けるわけにはいかない。ハーツラビュル寮の談話室も、人の出入りが多すぎる。ならばオンボロ寮に来ればいいと言うと、彼女の部屋でふたりきりになるのはまだ早い! と、真っ赤な顔をした彼に断られてしまった。健全な十六歳男子なら、勢いに任せて動くこともあるかと思っていたけれど、真面目なデュースはさすがにちゃんとしている……。
「……でも、いつまでも恥ずかしがるわけにはいかないよな」
わたしの思っていたことを、読み取られてしまったのかと思った。
「お互いに好きで、付き合っていて、一緒に過ごすのは当然のことだ」
「デュース……」
「僕たちは何もおかしくない。悪くない。だから……腹を括る!」
デュースはそう言いながらわたしの手をとって、指を絡ませてしっかりと握った。指先から、手のひらから伝わる熱が全身を駆け巡って、頬まで燃え上がってしまったみたい。こうして人前で手を繋ぐのは、初めてのことだった。
デュースはわたしの手を握ったまま、どんどんと前に歩いて行ってしまう。彼に引っ張られるようにやや駆け足で進めば、すれ違った生徒が「やるな、デュース」とか「お熱いなあ」などと呟く声が耳に届いた。
「こうして堂々としていれば、そのうち冷やかしも減るだろ」
男気に溢れたデュースの姿が眩しくて、格好良くて、手を繋いでくれたことが嬉しくて。一緒に歩いているうちに、いつしか周囲の目も声も気にならなくなってしまった。
「ねえ、わたし、デュースのことが本当にすき」
「……そうかよ」
照れ隠しをするとそうやって耳が真っ赤になるところも、全部、全部。