デュースに避けられている気がする。

クラスメイトとして一緒に授業を受けるし、食堂でも同じテーブルに座るし、グリムとエースも合わせて四人で過ごす時間は相変わらず多い。
だけど、四人での会話がふと途切れたとき、わたしに話を振ってくれなくなった。わたしとあまり目を合わせてくれなくなった。グリムとエースの話が盛り上がってどんどん先に進んでいってしまったとき、デュースとふたりきりになってしまうと、会話らしい会話もなく、自然と解散するようになった。

その原因はどう考えても、先日のわたしの発言のせいだろう。
わたしの気持ちを勘違いしたデュースに、エースに気があるのかと尋ねられたから、否定をした。そればかりか、「デュースの隣に座っているほうがすき」なんて、余計なことを言ってしまった。その気持ちに決して嘘偽りはないけれど、あのときのデュースの焦ったような、困ったような、戸惑いに満ちた表情が、いつまでも忘れられない。デュースもわたしのことを良いなと思ってくれていたら。なんて、勘違いをしていたのは、わたしのほうだったのだろう。



ナマエに避けられている気がする。

クラスメイトとして一緒に授業を受けるし、食堂でも同じテーブルに座るし、グリムとエースも合わせて四人で過ごす時間は相変わらず多い。
だけど、僕を見る目が明らかに変わってしまった。いつでも楽しそうな、嬉しそうな、眩しい笑顔を見せてくれることがほとんどなくなって、その代わりに無理して作ったような強張った微笑みが増えた。

その原因はどう考えても、先日の僕の態度のせいだろう。
彼女に微笑みを向けてもらえるエースに嫉妬して、「エースを見ているのが楽しいのか」なんて、余計なことを言ってしまった。彼女とは仲の良い友達だった。黙っていてもこれ以上距離が縮まることはないから、好意が伝わったほうがいいと思って、どうにでもなれと半ば自棄になっていたのもある。けれど結果、このざまだ。どうやら彼女は僕のことを好きではなかったらしい。どうせ関係がぎこちなくなるなら、曖昧な言葉で匂わせる前に、男らしくはっきりと告白すればよかった。



「あっ」
「えっ」

グリムが「今日もエースと勝負だゾ!」と言いながら寮を出て行って数分後、来訪者の存在を知らせるノックの音が響いた。グリムがなにか忘れ物でもしたのだろうか、それにしては律義にノックをして待つなんて珍しい……。そんなことを考えながらドアを開けると、そこにはデュースがひとりで立っていた。

「デュース、どうしたの?」
「どうしたもなにも、誘われたから来たんだが」
「……誰に?」

デュースが言うには。
エースの話によれば、わたしが「今日は久しぶりに四人で遊ぼう」と誘ったことになっていたらしい。さらにエースは日直の仕事で遅くなるから、ひとりで先に行ってくれ、ということで、デュースひとりでの訪問となったらしい。

「誘ってないし、グリムはエースと遊ぶって言って出かけたよ」
「なっ、エースの野郎……!」

どうやらエースが、わたしとデュースをふたりきりにさせたかったようだ。その理由はよくわからないが、正直、今このタイミングでデュースとふたりきりになるのは、とっても気まずい。

少し前までは友達として仲良くしていた、はずだった。なのにわたしが、デュースの隣の心地良さに気付いて、恋心を自覚して、余計なことを言ったから気まずくなっている。仲直りはしたいけれど、元の友人関係に戻りたいかと聞かれても素直に頷けない。

「…………」

なんと話を切り出せばいいか。脳味噌をフル回転させて上手い言葉を探すけれど、最適解が見つからない。

「あのさ、」

沈黙を破ったのは、デュースのほうだった。

「この間は、変なことを言って悪かった」
「え、ううん。わたしのほうこそ……」
「……結果は同じでも、過程が中途半端じゃ、納得できないんだ。だから、これは僕のわがままだけど、ひとつ言わせてくれないか」

真剣な眼差しで、デュースがわたしのことを見つめている。

「お前のことが好きだ」

その言葉を聞いた瞬間、頭が真っ白になって、心臓が早鐘を打ち始めて、時が止まったような感覚に陥る。ほとんど反射的に、口が勝手に「わたしもデュースのことがすき」と動いていたことに気が付いたのは、デュースに思いっきり抱き締められてからだった。
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