結論づける根拠は何なのだろうか。尋ねても答えは返ってこなさそうだった。一息つくように紅茶を一口。そして湿らせた唇で告げる。

『計画の最終段階に入る』

重々しく言葉にしたのはそんなので。最終という事は終わる、ということ。これが全て。君島はもちろんこの生活すらもだ。漸く慣れてきて楽しくなってきたところなのに、残念だ。そう思っている事に少し驚く。前の生活に戻れるよりも此処のほうが楽しいと感じてしまっている。生まれ育った家での暮らしよりも。何て思ってしまうほどには母や友人からの暴力は心に根深い傷を負わせていた。

月岡がじっとツナを見る。流石にここからは自分も大きく関わることになるんだろう。頷けば月岡は口を開く。

『沢田には学校に復帰してもらう』
「…うん」
「目的は2つあります。証拠を押さえるのと揺さぶりを掛けること」
「証拠?」
『テメェが加えられた暴力の現場をな。もし君島の洗脳が解けなかった場合訴訟出来るように』
「俺がカメラでバッチリ撮ってやんよ!」

向こうの言い分では先に手を出したのはツナだと言い張るだろう。けれどそれに関しては証拠は無いし、それにしたって暴力の度が過ぎる。
制裁を加えたいというのならその場で警察でも呼べば良かったのだ。そうすればどうしたって経歴に傷は付く。進学しようと社会に出ようと人目を気にして生活せざるを得なくなる。その方がよっぽどツナの人生に影響を及ぼすだろう。

法を介さない制裁はただの暴力。言ってしまえば犯罪以外の何物でもない。理由があろうともだ。


―月岡は、彼らの洗脳は解けると確信していた。これから準備に入るがサブリミナルを打破する為の画像を君島が用意したものと入れ替えて地上波に流す。もちろん並盛限定でだ。3つの牙城の内1つでも崩せればそれで事なきを得る。となればゆるゆるとだが洗脳は解け生徒たちは元通り。

今までの行いに罪悪感を抱き、深く傷付き反省する事だろう。そしてツナに謝罪を繰り返すのだ。それを受けても尚許せないと言うのであれば証拠映像を活用したっていい。

その時が来るのが楽しみだとほくそ笑んだ。

『さて、じゃあこれからの事だが。一先ず沢田が復帰するのは一週間後とする。』
「直ぐじゃないの?」
『ああ。色々と準備するものがあるからな。まあそれはほぼカズに丸投げするとして』
「頑張りまーすっ」
「沢田さんには私と嵐とで受け身と回避の訓練を受けてもらいます」

相手の動きをよく見て当たっているように見せ掛けて実は避けている。ここまでどうにか怪我が治ってきたのだ。受けるべき傷は最小限でいい。証拠はそれで十分足りる。
山本や獄寺、リボーン辺りはそれに気付きそうだが別に構わない。相手の大半は素人、一般人。それらを誤魔化すには問題ない。

いや、今ならリボーンすらも気付かないかもしれない。何せ君島の洗脳下にあるのだ。そうなる前と比べて判断力は格段に下がっている。それならより好都合。

『なんだったら今のうちにレベルアップしとくか沢田ぁ。マフィアなんぞと対峙しても赤子の手を捻るが如く!』

目を爛々と輝かせて言えば顔を青ざめさせて口元を引き攣らせた。おいどういう事だ。


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