時刻は夜の11:20。もう間もなく11:30となり潜入目的地のシステムが休日用に切り替わろうとしている。動きやすく人目に付きにくい色… 全身真っ黒な服を着て、月岡は建物の真横に立っていた。耳にはインカム。腰には必要な道具の入ったポーチを引っ提げて。ザザザ、とインカムにノイズが走る。

【やっほー嵐聞こえてるー?】
『おう。淀みなくな』
【通信状態は良好…と。んじゃ改めて本日の作戦をシュウのほうからお伝え頂きまーす】
【 嵐。今いる場所は把握してますね?】
『排気口の出入り口』
【そうです。まずは11:30になってシステムが切り替わった瞬間にカバーを外して侵入してもらいます。そして先程渡した腕時計型のマップを頼りに】
『システム室まで進入。必要なデータをぶん取ってくる。でいいな』
【yes.】

それを松浦と安達の傍で聞いていたツナは少し拍子抜けした。あれだけ事前に作戦会議と称して話し合いをしていたのに。3人が語る作戦はたったこれだけなのだ。
てっきりもっと色々な事をするのかと思っていたのだが。よく聞く陽動だとか撹乱だとかは一切なし。しかも潜入は月岡たった1人で行い、後の2人はバックアップ。後方支援。今からでも遅くない。やはり自分も行くべきではないか。そもそもの発端は自分なのだから。

運良く見つけた君島の親が経営する会社近くの廃ビル。インカムやその他諸々の電波が届く距離。走ればまだ間に合う。小さく身動ぎすればパッと松浦がこちらを見た。合った目にどきりとする。
そして全てを察してるかのように首を左右に振り。言葉もなくダメだと言われてしまった。ならば何か自分に出来ることをしたいがこの場にそれは無さそうで。そっとため息を吐き出した。

さて、間のなく件の11:30。きちんと腕時計の機能も備わっているそれを見て顔を上げる。軽くジャンプして排気口の網に指を引っ掛け準備を整えた。時間を確認出来なくなった月岡の代わりにサポートに入っている安達がカウントを開始。

【作戦開始まで10.9.8.7.6.5.4.3.2.1.0!】

カウント終了と共にありったけの力を込めて網を引っこ抜く。締めていたネジごと外れなかなかに大きな音を立てるが、人を呼び寄せる程のものでもなく。インカム同様月岡のこめかみに取り付けられたカメラから様子を伺っていたツナは最早驚きもしなかった。
本来ならば一介の女子中学生にあんな頑丈そうなもの引っこ抜ける訳がないのに。自分だって死ぬ気モードにならなければ出来ない。けれど彼女、月岡がやっても何ら不思議は無かった。寧ろ壊さずに外せた事が驚きだ。

取り外した網をそこらに投げ捨ててすぐさま排気口内に侵入。ほふく前進の形で体を落ち着け、ピッとマップを開く。チカチカと赤く点滅する箇所が1つ。そこが今回の目的地。

【嵐。まずは2Fまで進んで下さい。それまでは目立つトラップは全て切ってありますが、2F以降… 各階に上がる時に存在するトラップは完全に独立した作りになっています。残念ながらそちらは 嵐に直接切ってもらうしかありません】
『分かった。じゃあボチボチ行ってくるわ』
【ご武運を】


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