放課後の教室での出来事をツナに話してみた。
結論から言ってそれはもうめちゃくちゃに心配された。学校に行くのを引き止められる程に。強烈なデコピンを食らわし悶絶している間に登校せしめたという訳だ。

そうまでして学校に行きたいほど学校が好き、なんて理由がある筈も無く。だって昨日の今日だ。絶対に面白いことが起こると月岡は確信していた。だからこそ行きたい。

『おはざーす』
「はよっス」
「おはようございます」

月岡の住んでいるマンションの真下。植え込みの所に松浦と安達が待機していた。朝方特有の爽やかな空気の中、3人を纏う空気だけが少しピリピリとしている。しかしその中にワクワクとしたものも含まれており。何と勇ましい。

「決戦の朝的な?」
『アホか。まだまだ決戦にゃ程遠いわ。やっとこさ真ん中ぐれぇか』
「いや、半分も行ってないでしょう。手前辺りが妥当かと」
『長ぇ道のりだな。けど、この上なく楽しい』

そのセリフこそこの上なく不謹慎だろうに。
少なくともツナにとっては今後の人生がかかっているのだ。冤罪を掛けられたまま終わるかそれとも。
恐らくツナはそこまで考えてはいないだろう。とりあえず現状の脱却を。今後のことなど“今”がどうにもならなければどうしようも無いのだから。

下らない世間話や今後のプランについて話ながら3人並んで通学路を歩く。ちらほら姿を現してきた並中生たちをそれとなく観察する。まだ数がまばらだからかそれとも学年が違うからか。月岡たちを敵視する生徒はいなかった。
何だ、と少し拍子抜けする。てっきり全校生徒にツナを匿っているという話が広められ、徹底的に排除されると思ったのに。まあ素直にやられるつもりはないが。

肩透かしを食らった気分だ。と若干つまらなそうに大きな通りへ出る。並中生が多く使う通学路。そこへ出た途端、殺意混じりに沢山の視線が3人を襲った。ゾクゾクと肌を粟立たせる感覚に三者三様のリアクションを取る。

安達は軽く口笛を鳴らし
月岡は楽しげに笑ってみせ
松浦は肩を竦めさせた。

しかし共通しているのは皆どこか喜んでいるということ。周りは敵だらけという状況でよくそんな。ツナがいたら縮み上がっていたことだろう。
まだ皆睨んでくるだけで文句を言いに来たり暴力を振るってくる気配はない。3人だからか。それともここが往来だからなのか。人目を気にするという事は一応自分たちの行為が良いものではないと自覚しているようだ。

それでも手出ししてきた奴は相当危険な状況にまで進行しているということ。伺う限りは… いや、軽視しないほうがいい。油断して後手に回るのはごめんだ。学校が近付き生徒が多くなれば多くなるほど、3人に向けられる視線は増えていく。遠慮がちのもあれば好奇心混じりのも。そういうのは大方周りが見ているから気になって、というのだろう。


そう遠くないうちに月岡たちがツナを匿っている事が全校に知れ渡るだろう。そうなった時クラスメートや各々の友人たちは一体どのような態度を示すのか。それが楽しみだと言ったら性格が悪いと罵られるだろうか。どうでもいい。



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