夕日の差し込む、放課後の教室。
目に入るもの全てがセピアとなるその中で、同じように月岡も染め上げられていた。校内に残るのはほぼ部活動に勤しむ人間。それなのに部活に入ってるでもない彼女は1人何をしているのだろうか。いつも共にいる2人の姿はない。ただ1人何かを待つようにスマホを弄っている。松浦と安達をか。それとも。時間潰しのナンプレもあっという間に解かれていく。

「オメーが月岡 嵐か?」

無音だった世界に雑音が混じる。少しだけ表情を歪めるがそれ以上のリアクションをさしてせず顔を上げた。月岡の正面、2つ席を挟んだ机の上に黒のスーツに身を包んだ2頭身の赤ん坊が立っていた。スーツと揃いの帽子にカメレオン。ツナに聞いた容姿と完全に一致する。
成程これが。
話には聞いていたがなかなか異様な存在だ。その身の丈に似つかわぬ威圧感が溢れていて。よくもまぁ今までこんな生き物に気付かなかったものだ、と心の中で呟いた。手元を見ずにホーム画面へと戻りスマホの電源を落とす。
さて、

『テメーがリボーンだな』

駆け引きを始めようか。

「…………。」

オウム返しの如く真似され癪に障ったのか唇を真一文字に結んでこちらを睨む2頭身。それをニヤニヤと笑いながら観察した。
ツナから聞いたこのかなり特殊な家庭教師兼殺し屋のリボーンの性格は自分勝手で極めて尊大。強引に物事を進めツナをボンゴレ10代目へと育成しようとする。依頼を完遂させようとする面を見れば確かにプロ。だがそこにツナの感情を考慮する様子は感じられない。

本人が嫌がってでも聞き出し続けたリボーンとのこれまでの日々。それらから作り上げた恐らく完璧であろうリボーンの人間像から考えるにたったこれだけの事で機嫌を損ねるとは思えなかった。やはり君島の影響か。人の性格を変えてしまうほどのものを君島は有している。

『(ワクワクすんなぁ)なんだ、話し掛けておいてだんまりか? 最近の赤ん坊は教育がなってねーなーぁ』
「…テメェがツナを匿ってんは分かってんだぞ」
『あぁ。それで?』
「ツナを出せ。アイツは夏穂を傷付けた。その報いは受けなきゃならねー」
『些末な言い分だな』
「何…?」
『柔軟な思考を持たず凝り固まった観念からしか言葉を発さない。それを些末と言って何が悪い』
「…………。」
『まずはテメェの監督不行き届きを猛省すべきだろーが。沢田の家庭教師なんだろ、一応』

一応、の部分を強調して言えばリボーンから放たれていた空気が更に剣呑なモノになった。

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