「沢田、ちょぉコレ見てみ」
「動画?」

くるりとこちらへ向けられたパソコン画面。何かの動画のトップ映像が静止した状態だった。パソコン越しに安達を見れば うん と頷かれる。それに誘導されるがままマウスポインタを動かし再生ボタンをクリック。止まっていた映像が動き出した。

「…………。」

何てことはないただの、外国のホームビデオ。大きな犬、はしゃぐ子供たち、撮影者の親の声。話の流れからサブリミナル効果というのを分かりやすく解説する何かを見せてくれるのかと思ったがどうやら違うみたいだ。

しかし何か、違和感が残る。何がどうとは言えないし分からないが本当に何かが引っ掛かる。後味が悪い。なんだろう。5分ほどのものが終わり再び画面が静止の状態へと。何とも言えない表情をしていれば隣の月岡が声をかけた。

『気付いたか?』
「よく分かんないけど… 何か、うん、」
『超直感っつーやつで何となく気付いたみたいだな』
「この映像をね、コマ送りにしてみるとー」

パソコンの後ろ、ツナの対面から安達が手を伸ばしパソコンを操作し映像をコマ送りにしていく。見ていないのによく手探りだけで動かせるものだと感心する。流石だ。
頭の隅でそんなことを思いながら目は画面へ釘付け。先程見ていた映像が1つ1つコマ送りされていく中、ふっと違うものが現れた。並中の校舎だ。少しだけツナの眉間にシワが寄る。

「これ…」
「これがサブリミナル。意識しない意識下に働きかけるっつーやつ」
『こうして映像と映像の間に全く関係の無い絵を等間隔で入れる。それにより対象者の潜在意識にってな』
「先程も言ったように君島夏帆の親は映像作成会社を経営しています。なら彼女にその知識があってもおかしくはない。それを使い、2-Aの生徒を洗脳状態にした。というのが我々の考えている可能性の1つです」
「ちょ、ちょっと待って!えと、サブリミナル?ってやつで人を洗脳したりなんか出来るの!」
『出来る』

慌てふためくツナに、月岡が疑問の棚を閉じるように言う。淡々と。冷静に。

『普段見る映像の中に君島の写真を入れておく。それをほぼ毎日見ていれば本人も気付かないうちに好意を抱かせ思うままに行動させることは出来る。』
「…それで、その… 特定の人物に暴力振るったりとか、出来るようになるの?」
『不可能ではないが… 難しいな』

今月岡たちが“可能である”と断言するのはその論文を見たからだ。実際自分たちが実験したわけではないから特定の人物… ツナを虐めるよう仕向けられるかは微妙なところ。拝見した論文の結果から仮説を組み立ててみれば、不可能ではないがあくまでそれは仮説。絶対ではないし確実性もない。
それを断定し、原因を突き止める為に

『近く君島の親の会社に侵入する』
「えぇ!?」
『恐らくそこになら使用したであろう画像も残っているだろうし、他にも何か形跡があるかもしれない』
『決行は今週金曜の夜。週末、会社が休みになり気を抜いた瞬間に忍び込む。ケツの穴締めてかかれよ野郎共!』

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