同時刻、並盛中屋上にて。

「わざわざ呼び出して、一体何の用だい?」
「ご足労頂きありがとうございます。お伺いしたいことがございましてお呼び立て申し上げました」

足の爪先から頭の天辺まで丁寧に黒で染められた少年・雲雀恭弥はその切れ長の瞳をきゅっと細めた。
肉食動物の威嚇のような行動に思わず松浦は苦笑いを溢した。怯えはしない。彼より自分の上司の方がよっぽど恐ろしいからだ。睨みはするものの攻撃を仕掛けては来ない様子を見て、言葉の先を促しているのだと察知して適度な距離を保ったまま口を開く。

「誠に失礼ながら雲雀さんの生活スタイルをお教え頂けませんか?」
「…聞いてどうするの」
「それはもちろん、今後の参考に」
「沢田綱吉の無実を証明するために?」

同じ言い回しで返してくる雲雀に目を瞬いてしまう。
流石に自ら並盛の秩序を名乗るだけあって侮れない。戦闘面だけでなく頭も良いとは何と手強いことか。敵に回すならそれぐらいがちょうどいいと月岡は言うだろうけど。しかし上司の邪魔になりそうなモノは先に排除してしまいたいと考えるのが部下。それをグッと飲み込んで笑みを浮かべた。

「ご想像にお任せします」

上手いはぐらかし方だ。こうなれば相手は興を削がれるか、たじろいで口をつぐむしかない。雲雀の場合は前者だった。

「ふぅん…。まぁいいけどね。で、話の続きは」
「はい。とても些細なことなのですが御自宅にある電化製品で主に使ってるものをお教え頂けないかと」
「電化製品?」
「えぇ」
「そうだな… パソコンとか、スマホが一番かな。後は電気レンジや冷蔵庫…ありきたりなヤツだよ」
「テレビはあまり御覧になりませんか?」
「あるけどあんまり。Webのニュースで事足りるからね」
「なるほど…」

奇しくも、というよりは質問内容も決めていたのだろう。月岡が骸にしたのと同じ内容。厳密には君島夏穂についての部分を省いているが。雲雀は君島には関心がないようだからだろう。無駄なことはしない。
さて、一体彼女らは何を掴んでいるのだろうか。
受け取った答えを飲み込んですぐに顔を上げる。今この場で考え込むのは最善ではない。先にいる獰猛な獣の前でそうそう隙は見せられない。

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