時として言葉は刃にもなる。

それを人よりも早い段階で気付いてしまったツナは、同じく早い段階でその刃を受けるようになった。そういう言葉を投げられやすい、弱々しい面が多かったからだろう。罵られるのは日常茶飯事だったし、最近では本当に酷い罵倒を受けていた。
だから少しは慣れたと思っていた。そういうのには。しかし月岡の何気ない一言が胸に深く突き刺さる。心臓に近い、けれど決して体内には存在しない部位が痛んだ。

『表情が強張ってるな。私の言葉に傷つきでもしたか』
「…っ月岡さんは、」
『勘違いするなよ、我々はテメェの協力者であって味方ではない。優しい言葉ばかりかけて甘やかすような真似をしてやりはしねぇ。必要ならば冷たい言葉も投げつけるし場合によっちゃあ見捨てる。…つか、今更傷付いてどうする。もう散々そういう目にあった癖によ』

一言一言が本当に刃物同然だった。
月岡の言ってることは正しいのかもしれない。無闇矢鱈と甘やかし優しくするのではなく、周りと全く同じ扱い。特別ではない。そうであることが何より大事だということはツナも分かってはいる。けれど今まで自分が受けていた理不尽な暴力。その実態を知っているというのなら少しぐらい優しくしてくれてもいいんじゃないかと思ってしまう。
不満から、手をグッと握り締める。これではただ暴力が無いだけで今までと何ら変わらないのでは。

『後悔したって遅ぇよ。手を取った以上無かったことには出来ねーしさせねぇ。言った筈だが?』
「分かっ、てるよ…」
『ならいい』

苦々しげに呟くツナに目もくれず注がれた紅茶を口に含む。口や性格の男らしさからは想像出来ない程その所作は優雅で。美しさと意外性からつい見とれてしまった。

「(そういえば以前は、こうしてリボーンがエスプレッソを飲むのを眺めていたっけ)」

その瞬間、言っていなかった重大すぎる事実を思い出しハッとする。しまった、まず最初に言わなければならないことを。

「あ、あの!」
『あ?なんだまだウダウダ言ってんのか。いい加減しつけーぞ、男なら腹ぁ括れ』
「そうじゃなくて!その、言ってなかった大事なことがあって…っ」
「大事なことぉ?」
「その様子だと随分と大事な話のようですね」
『ふむ…。分かった話せ』

内容を促されて言葉に詰まる。

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