*


カキーンッ
気持ちのいい甲高い音を放てば、湧き上がる歓声。
白球が放物線を描いて青空へ吸い込まれていった。
次第に小さくなる球と空に浮かぶ雲とが交わり、消えた。それを目で追っていた観衆たちも、なおさら声をワッと上げ手にしたメガホンやラッパを叩き、鳴らす。遠く郊外にまで届きそうな音に表情をしかめながらも、緑の金網越しにパシャパシャとシャッターを押した。野球部のエース、山本武の太陽のような笑顔がネガに焼き付く。一塁、二塁、三塁を回り見事にホームへと帰還した選手たち。得点板には白球と同じ白いチョークで 3 と書き込まれた。



標的を変えながら、なおもパシャパシャとシャッターを切る




「わー、やってるやってる!」

『!』

「けっ、野球バカのヤロー負けてりゃいいのに」

「ご、獄寺くん…」




何やら声がする。聞き慣れたそれに、カメラから顔を離すとそちらへ振り向いた


ススキ色の重力に逆らった髪型に、美形だけども不良


立場的には相対しそうな彼らが2人並んで、楽しげに野球を観戦していた

片方はとても嫌そうにだが



『あれ、2人とも来たんだー』

「えっ、あ!」
「んだ、テメーも来てたのかよ地味部」

『うん。写真撮ろうと思って』

「まぁ、テメーはそれしか出来ねぇからな」

「ちょ、獄寺くん!それは言い過ぎ…」



なかば見下したように、煙草を吸いながら彼を見る


白く細長い指にはめられた銀の指輪が、太陽の光を浴びてキラキラと輝きを放つ。

ちかっ、と目を刺激したそれに目を細めるとにこりと微笑んだ



『いいよ沢田くん、事実だし。それにそう言われて嫌じゃないしねー』

「え、そうなの…?」

『うん、むしろ光栄?』



撮ることが好きだから
、そう言われて不快にはならない。

手にした真っ黒なフォルムの相棒を2人に向けて、カチリ とシャッターを押した


太陽のせいか、眩しそうに目を細める2人が焼き付く


すると、何を思ったのだろうか


首にかけていたカメラを外し、軽くツナに差し出した



『よかったら撮ってみる?』

「いいの!?」

『うん、楽しいことはみんなでわけないとね』

「あ、ありがとう…」



差し出されたそれを、恐る恐る受け取る


ズシッと思った以上の重みに一瞬驚くも、慣れない手つきでフィルターを覗いた



澄み渡る青空に白い雲



先ほど彼も見ていた風景が広がった
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