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写真部。
とは今現在並盛中で最も地味な部活。常に廃部、または同好会に格下げの危機に迫られている。
そのため風紀委員よりあてがわれる部費は雀の涙ほどだとか。そんな部が、彼の所属する部活だ。
だが、周りの批評なんてなんのその、地味だとかなんだと言われても気にすることなく彼は今日もカメラを構える。

「(あともう少し…)」

今撮ろうとしているのは、学校の下駄箱の軒先に出来たツバメの巣。雛たちが身を乗り出すその瞬間を狙っているようだ。
実際のところ、写真部は活動こそ地味だがそれなりの成果を上げている。撮った写真は並盛市での大会ではいつも上位。校内にもいくつか撮った写真が飾られている。 それなりに功績を残し、並中の繁栄にも手を貸しているにも関わらず何故 こんなにもギリギリなところに立っているかというと。彼らは一環して、そのような功績に興味がないのだ。ただ純粋に写真を撮りたいが為に入部し、廃部にならない程度に功績を残す。簡潔に言えば有名になろうという意欲がない。だからこそ風紀委員会も写真部に余分な経費を渡さない。本当に必要最低限のみ。

『(…っしゃ、撮れたぁぁ!)』

ツバメの巣から顔を出す雛たちを激写。
随分とおかしな体制になってしまったのも気にせずニンマリと笑顔を浮かべる。ファインダーから顔を離して、肉眼でツバメの巣を見上げる。きっと来年も、またここに巣を作る。
その時も、また―

「…また写真撮ってるの」
『 ! …ひ、ばりさん…っ』

声を掛けられて振り返れば、下駄箱にもたれかかりながらこちらを見つめる雲雀。細く吊り上がった鋭い瞳に睨まれて、体が縮こまった。

「よく飽きないね。そんな毎日毎日写真なんか撮って」
『好きなこと、ですから…』
「ふぅん…」

さも興味なさげに呟く。
雲雀の一挙一動にビクビクする彼もまたごくごく平凡な生徒。 雲雀曰わく草食動物。怯えるのは仕方のないことだ。

「まあ、君が何を撮ろうと興味ないけどね。風紀を乱すようなことだけはしないで」
『は、はいっ』

下駄箱に預けていた体を持ち上げ、くるりとその身を翻し黒い背中を見せ去っていく。なかば呆然とその後ろ姿を見送っていた彼の目に、黄色い物体が映った。

「♪みーどりーたなーびくー♪」
『…!』

ふわふわの羽毛を身に纏う、雲雀の愛鳥・ヒバードがゆっくりと旋回しながらいつもの歌を歌いながら、雲雀の頭に着地する。そのヒバードを、彼はキラキラとした目で見つめた。

『あ、あのっ 雲雀さん!』
「………なに」
『そ、その…っ 写真撮らせて下さい!』

写真のこととなれば、恐怖なぞ無いに等しい
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