「アドリブ入れるなよヒロイン!思わず突っ込んじゃっただろっ!」
『まぁお母様たち一体どうなさったんですか』
「棒読みにもほどがあるし急に台本に戻るし…!これじゃオレがアドリブ効かせたみたいじゃん!」
「お、落ち着いて下さいじゅうだ… お母様っ」
「そうだぜーツナ、もっと気楽に楽しんでやろーぜっ」
「…そうだね…。え、と“シンデレラ!何をこんなところでボサッとしているの!床磨きは終わったのかい!?”」

予期せぬ事態に慌てながらも周囲のフォローに助けられながらどうにか継母はセリフを口にします。
今回の事で一番胃を痛めたのは他ならぬ継母(ツナ)でした。 だってまともに物事を考えられる人間は継母1人だったのですから。 今日はついに本番という事で朝から胃薬を飲んできた継母。そんな彼女?の口からはシンデレラへの傲慢な言葉。 嫌味ったらしく床を見てはねちねちとお小言を。
挙げ句には床に置いてあった水の入ったバケツを姉の1人が蹴り倒したのです。せっかく綺麗にした床が水浸しになってしまいました。

『あぁ!お姉様なんてことをっ(オイコラてめぇ隼人、後で覚えてろよ)』
「ふんっ、掃除しやすくしてやったんだ有り難く思いな!(すみませんヒロインさん!すみませんすみませんっ)」
「ついでに自分の顔も磨いたらどうだい!(ははは、ヒロインってば怒りっぽいのなー)」
「副音声で会話すんな!!」

一体どこでそんな技術を手に入れたのでしょう、シンデレラを始め姉2人までもが心中で会話のやり取りを。 類い稀な才能であることは確かです。 しかし、そんなやり取りも継母の一言で静まり。ひどく重たげなため息を零しながら話題を変えるかのようにビシッとシンデレラに人差し指を突き付けました。良い子の皆さんは人を指差してはいけませんよ。

「シンデレラ、お前に仕事をあげるわ『いらね』…ゴホン!来週お城で舞踏会があるの、王子様の婚約者を決めるのよ。そこに私たちも行くから3人分のドレスを仕立てなさいっ!」
『(例え演技でもイライラするわぁ)』

完璧なまでに作った笑顔で“はい”と頷くシンデレラ。けれど感情までは完璧に操られなかったようで、口元に浮き上がる血管と背後から沸き立つ怒りのオーラが何とも言えず。
あまりの恐ろしさに顔を引き攣らせた継母は姉2人を引っ張ってその場に残されたシンデレラはその身の内に多大な怒りを抱えながらも、ドレス作りのことを考え途方に暮れるのでした…。

『水に濡れたら溶けるドレスでも作ってやろうかしら』

ただでは転ばないシンデレラです。
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