それから数日が経ち、王子がシンデレラの家にやってきました。あの晩やってきた者全ての家を廻り、あの靴の持ち主を捜しているのです。1人1人にガラスの靴を履かせて。残念なことに今まで何軒もの家を廻りましたが、誰1人として合わず。
シンデレラの義姉たちも試みましたが、結果は言わずもがな

「…確か、本当は怖いグリム童話だと娘の踵切っちゃうんだよね…。」

「10代目ぇ!?」

「はは、母様本気なのなー」

ガラスの靴に入りきっていない姉たちの踵をジッと見ながらぼそりと継母はそんな事を呟きました。
よっぽど娘たちに妃になってもらいたいようです。
しかし慌てる姉たちのことなどどうでもいいのか、王子は言います。

「…もう1人いるよね」

「え゛(ギクリ)」

「奥の部屋から気配がする。早く連れて来なよ」

気配って。
と継母は内心ツッコミながら表情を暗くして渋々シンデレラのいる奥の部屋へ行きました。シンデレラは舞踏会に行っていないのだ、靴を履かせるだけ無駄だとは思いながらも無言の圧力があるので反論も出来ず。 何も知らない継母は奥の部屋へと消えました。そして数秒後、1人だけ戻ってきて。どうしたと皆が目を向ければ行った時より沈んだ表情。

「…あの、王子様」

「何。娘はどうしたのさ」

「それが…。“用があんならテメェが来いや”と…。」

「…………。」

とんだセリフを吐く娘もいたものだ。一国の王子相手に来いだなんて。けれどその言い方に何となく惹かれ王子はクサカベからガラスの靴を奪うとスタスタと奥の部屋へ向かいます。ギィと軋む木の扉を押し開ければ、同じく木の丸イスに腰掛けけているシンデレラが。すすに汚れた顔にボロボロの服。あまりの格好に一瞬眉をひそめましたが、重なった彼女の蒼い瞳にハッとします。
忘れようもない、あの印象的な蒼を。

急に速まる心臓を抑え、シンデレラに人捜しの旨を伝えます。

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -