熱を孕んだ、真剣な眼差しでもってシンデレラを見上げました。

「どうか、レディ。私と踊っては下さいませんか?」

そうしてドレスと同じ純白のシルク製の手袋に包まれたシンデレラの手の甲にキスを落としました。どよめく人々、その視線を一身に受けながらニッコリとシンデレラは笑い。今度こそはしっかりと首を縦に振りました。
それを見て王子は安堵したように笑いながら、シンデレラの手を握ったまま立ち上がり皆が踊っている輪の中へ彼女をエスコート。普段は暴君と呼ばれ恐れられている王子も一応は教養を身につけているようです。


そこからは2人だけの世界でした。
音楽に合わせてステップを踏み、夢のような一時を共に過ごします。
言葉を交わすことはありませんでしたがずっと2人は見つめ合い、目で語り合って。まるで世界に自分たちしかいないような感覚に陥りました。
けれど時間は確かに経過していき。楽しげに踊っていれば突如として時計台の鐘が鳴り響きました。
それは12時を告げる―…。 シンデレラは魔法使いに言われた言葉を思い出し、チッと舌打ちを一つ。

『 ちっ (一発も出来やしなかった…。既成事実さえ作ればこっちのもんだったのに!…まぁいいわ、手筈は整ったし)』

「 ! (舌打ちされた僕何か変なことした!?)」

『申し訳ございません王子様。門限なので失礼します』

「えぇえ! あ、ちょ、待って…っ!」

ここまできてビックリにもほどがある理由を付けてシンデレラは王子の手を離します。あまりのことに驚いてみせますが、王子はすぐに走り去ろうとするシンデレラを追いかけ。せめて名前だけでも…
こちらは男であちらは女。
しかも重たいドレスを着ているというのに、どうしてか追いつけず。シンデレラのポテンシャルの成せる技です。はぁはぁと息を切らしながらも、どうにか追いつけばそこは外へと繋がる大階段。

そこをカツカツとヒールを鳴らして降りてゆくシンデレラの姿が。また追いかけようとすればシンデレラが何かを落とします。
あ、と声を漏らしますがシンデレラは一瞬の躊躇いの後、走り去ってしまいました。1人残った王子はゆっくりと階段を降り、彼女の置いていったそれを拾います。

「ガラスの、靴…。」

片方だけのそれを手に取り、眺め。王子は決心いたしました。これを使って彼女を捜し出そうと。
一目で恋に落ちてしまった彼女こそ、自分の婚約者に相応しいと―…。

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