純白のシルクの生地にその瞳と同じぐらい青いフリルが縁を飾る清楚でいて豪奢なドレス。
ひたすらにひたむきにシンデレラを見つめていれば、チラリとシンデレラが王子を見て。パチっと視線が絡まったのは一瞬だけで、すぐにシンデレラのほうから逸らされてしまいました。
男心をくすぐるそのテクニックは一体どこで学んだのでしょうか。


見事なまでにその罠にハマった王子はガタッと音を鳴らして席を立ち。脇目もふらずにシンデレラの元へ駆け寄ります。踊る人々の間を縫うように進み、ようやくシンデレラの元へ辿り着けば既に彼女には何人もの男が言い寄っていて。

「お美しいレディ…。どうか私めと一曲踊って頂けませんか?」

「いえ私と!」

「彼より私のほうと…っ」

「彼女と踊るのは僕だよ」

「「「!」」」

手を取り熱っぽい視線でダンスに誘う男たち。ちやほやされるのが大好きなシンデレラは大変ご満悦。
けれどそれを静めるような声が響き、男たちは一瞬で静まり返りました。決して遅くはないターゲット… 王子のご登場に薄くシンデレラは微笑みます。勝てるワケのない相手の登場に、男たちは怯みシンデレラの手を離しました。

「君、名前は?」

『…私の名など、聞いてもあなたはすぐにお忘れになるでしょう?』

「忘れるワケないよ。…いいよ、教えたくないというのならそれでも、その代わり、僕と踊りなよ」

『お断りします』

「 え 」

思ってもみなかった返答に王子は思わず目を丸くしました。呆然とシンデレラを見ていれば、桐で作られた透かし彫り細工の扇子をパッと開いて口元を隠しました。その間から見える彼女の唇は緩く上がっていて。 赤い唇を見て、王子の心臓は高鳴ります。またあの蒼い瞳に見つめられ、体が熱くなってゆきます。

『私と踊りたいと仰るなら、それなりの誠意を見せてくれないと』

「…………。」

そう言うと、スッとシンデレラは自分の左手を差し出しました。それを見て、王子は言われずとも意味を理解し。
己の身分や周りの目など気にもせず、王子は迷わず大理石の床に膝をつきました。人々がざわめくのも気に留めず差し出されたシンデレラの手をそっと掬い。

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