所変わってここはお城の大広間。天井にからは豪奢なシャンデリアが吊り下がり、その明かりに照らされて大広間は眩いばかりに輝いていました。
光の海を泳ぐように燕尾服やドレスを着た男女が踊っています。
見ているだけでも心躍るような光景ですが、どうしてか王子の表情は曇っています。今回の主役と呼ぶべき人が…。一体どうしたと言うのでしょう?

「…クサカベ」

「はいっ」

「限界咬み殺してくる」

「待って下さい委員ちょ… いえ王子!そんな事をしたら台なしですよっ!」

用意された席から立ち上がり、隠し持っていた鈍い銀色に輝くトンファーを構える王子様。吊り上がった瞳には怒りと殺意が入り乱れていました。どうやら本気なようです。そんな王子を見て側近のクサカベはすぐさま止めに入ります。きっと彼は胃薬を常備しているに違いありません。

明らかに人として人格破綻者な王子。そんな彼の婚約者の座を手に入れようとする娘たちはどうかしてる… のもいれば純粋に王子に好意を抱いてる方もいます。何故ならそんな王子は大変整った顔立ちをなされていて。性格も良ければ、ここにいる倍以上の娘ががいたことでしょう。

必死にクサカベが宥めた結果、ぷりぷりとしながらも王子は再び席につき。ジッと踊っている人を眺めます。

「(何が楽しくてこんな…。どうせ権力に目が眩んだだけだろ。それに大体この歳で婚約なんて ブツブツ)」

どうやら王子は今回のことに不満たらたらのようです。最早婚約者を決めるつもりなど毛頭なく、ぼんやりとくるくると躍る人々を見つめます。
あぁやっぱり下らない咬み殺したいと考えていれば小さく人々がざわめきました。 ただでさえうるさいのに何なんだ、と苛立ちを込めながらざわめきの中心である大広間の扉のほうを見れば人垣。
けれどそれがゆっくりと左右に分かれ道を作り。いよいよもって何だと目を細めて見てみれば一瞬の後にそれは見開かれました。そうせずにはいられなかったのです。

人々が避け、出来た道を当然だと言わんばかりに胸を張り堂々と歩くその人… シンデレラのあまりの美しさに王子は息をするのも忘れ、見入ってしまいます。

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