恭弥は頭から足先までずぶ濡れだ。何時も羽織っている学ランを手に持ってるのはいいとしても、酷い濡れようだ。ついさっきの気怠さが嘘の様にベッドから飛び起きた俺は、彼を部屋の中に入れて慌ててタオルを取りに行った。
最近あんま会ってなかったし会えたのは嬉しいけど、余りにも唐突過ぎる上に窓からの侵入。玄関から入ろうよと思いつつも洗面所の棚からタオルを取り出した時に鏡より見えたのは満面の笑みを浮かべる俺。そこまでか、と一人ツッコミつつ急いで階段を駆け上がった。

 
「ほら、座って」


床がこれ以上濡れないように大きめのタオルを敷いて、その上に乗るよう促した。わしゃわしゃとバスタオルで髪を拭いてやるのを大人しく受け入れる彼を不思議に思いつつも手を休めることはやめない。


「なー、どうして来たんだ?今日遠足だったんじゃ」

「僕がその遠足に行くと思うの?……それに今日、誕生日なんでしょ」

「あ、恭弥の登場ですっかり頭から抜けてた」


そう言えばそうだった。さっきまで散々喚いていたのに彼が来たことによって俺の頭の中で僅かな時間ながら抹消されていた。余りにも間抜けな自分に恥ずかしさを覚えていれば、恭弥からの返事がない事に気付く。どうしたのかと手を休めて彼を覗きみれば、顔を真っ赤に染めている姿がそこにはあった。俺的には何気ない一言だったんだけど彼なりにはかなり嬉しかったみたい。……と、都合良く解釈する事にした。
誕生日を祝ってもらわなくても来てくれた事に意味があったと思う。耳まで真っ赤に染め上がってる彼が愛らしくて思わず抱き締めてしまった。


「これ、あげる」


丸くなっていた学ランから出てきたのは手の平にのる大きさのカップケーキ。投げる様に渡されたソレと恭弥を見比べば言われなくても彼の手作りだと言う事事が分かった。

「Happy Birthday」

少しぶっきらぼうに、それでもしっかりと紡がれた言葉と共に俺は彼を押し倒す。カップケーキもいいけれど、先にこっちを食べるべきだと促す本能に従ってみた。

気分一転
(エプロン姿が見たいとは)
(殴られるので言わないでおく)

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