「あ、そー言えばこの箱ン中って……もしかして、もしかしなくてもケーキ入ってたりする?」


持ち上げられたソレは恭弥に頼まれて会長に持って貰っているケーキで、流石甘党の会長と一発で言い当てた彼に心の中で称賛の拍手を贈った。普通は白い箱ってなだけで判らないぞ。


「恭弥、じゃなくて雲雀に頼まれた「あのきょーやに! へぇ、珍しい事もあるもんだな」


驚きの声を上げた御柳会長。やはり彼からみても甘味を頬張る恭弥は想像出来ないみたいだ。ふーん、へぇーと棒読みで言いつつ、未だ握っていたオレの手をキツく握り締めた。何事かと真横を見れば僅かに頬を染めている姿が。


「あ、あのさ、このケーキ少し食べちゃだめかな?俺此処の店好きなんだよねー。こんないっぱいあるし、少し食べてもばれないと思わない?きょーやの知り合いって事で既に免除なんだけど、数馬さんが並盛の制服をコスプレしたの黙っとくしさ、」



だめかな?


首を傾げて少し眉尻を下げる彼からは先程感じた雰囲気とは一転して大人っぽさと言うより女の子ぽくて、しかしまた一味違った可愛さがあると不覚にも感じてしまった。
結局少しだけならと押しに負けて頷いてしまえばもう少しで応接室と言う一歩手前で生徒会室へと通される。何故か置かれている食器棚からフォークとお皿を持ってきた会長の行動の早さに驚き、更には勧められるがまま口にしてみれば思いの他美味しくて目の前の彼が小さく悶えている理由が分からなくも無い。
妙にテンションが上がったオレと会長の声が応接室迄聞こえるのは理に適っていないとは言えなくて、トンファーを両手に持って般若顔負けの恭弥の登場に会長が一言、「御馳走様」と。これぞ正に鶴の一声であろう。火に油を注いだ会長に堪忍袋が切れた恭弥が殴ったのは火をみるより明らかで、涙目になって泣き付かれたオレも第二の被害者になるのは目に見えていた。


「せ、折角だから一緒に食べてあげようと思ったのに!」

「あー、そうなんだ。ごめんね。俺は欲望に忠実なんだ」

「もしかして恭弥って「あ、数馬さんと仲良くしたいから、ケーキまた今度買ってくるしそん時一緒に食べよ!そん時にきょーやも食べたらいいんだよっ」


後日、不機嫌な顔をした恭弥と、それに反して満面の笑みを浮かべながらケーキを突く御柳会長との板挟みにされていたオレは何とも言えない複雑な気持ちを孕んでいた。


触らぬ隣に祟りなし
(この場合、両方の事言えるよね)

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