俺が時計をチラチラと気にしているのに気付いたのか。
図星ではある。しかし俺は「つまらない」と言う理由で時計を見ているのでは無かった。しかしそれを今言った所で所詮言い訳にしかならないのだ。
自分の軽率な行動で目の前の彼女が傷ついてしまって、俺は何とも言えない罪悪感に苛まれた。

俯かずに真っ直ぐと俺を見る京子の目には今にも零れてしまいそうな程の涙が溜まっており、目を覆って薄い膜を張った。零れるまいと思う一心で腕は僅かに反応したが、戸惑う。しかしジッとしていられるはずもなく、一度は躊躇した手に喝をを入れ、人差し指を伸ばして彼女の涙を掬う。

「ごめん。そんなつもりじゃなかったんだ。ただ……」

「ただ?」

「は、恥ずかしい話なんだけど、京子と二人で居ると……変に緊張しちまって、何話せばいいか分からないんだ。
それこそ二人っきりだし、俺が変に京子の意識しちまうのもどうかな「そんな事ないっ!」 

……え?」

「私だって……数馬さんと居ると、クラスの男の子と喋ってるより心がポカポカして胸が熱くなる。それに今だって……二人って意識する度に顔が火照って。」

真っ赤な顔で俺の言葉を否定した京子は、自分の想いを紡ぎだす。その言葉に羅列に一瞬呆気に取られた俺だったが、我に返った時は京子に涙を掬っていた方の手を掴まれた時だった。

「私、数馬さんが好きなの。お兄ちゃんが数馬さんを連れて来るって言う度に嬉しかった。けれど数馬さんはお兄ちゃんのお友達で、二人で喋る時とかあまりなくて……。どうしても目の前にお兄ちゃんが立っていて、私は数馬さんの一番になれないのかって」

俺の手を自分の頬に当てる京子の頬は確かに熱を帯びていて、突然の告白に自身の頬も熱く熱を帯びた気がする。そんな恥ずかしい顔を見られたくなくって、そして目の前の彼女に触れたくって、俺は京子を引っ張る形で自分の傍に引き寄せた。

「数馬さ…」

「俺もさ、何時も待ち合わせ時刻より早く来るのは、京子と少しでも目を合わせておきたくて早く来てた。
了平と京子を比べる気はねぇけど、了平は俺の親友で、京子は俺の想い人。」

だから京子の告白聞いてスッゲー嬉しい。

顔は見えないけれど、俺の言葉に京子が笑みを零した気がした。それからお互いに顔を見合せて二人とも顔が赤いのに気づいて笑って、何が面白可笑しいのか第三者が聞きたくなるくらい笑みを零した。 
帰ってきた了平に「何事だ」と言われるのはもう少し先。


緊張、故の笑み

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