「数馬さん。」

「ん?」

時計を見ていた俺は京子の呼びかけによって顔を上げた。するとそこには何処か不安げで沈んだ表情の京子が。余りにも切なくこちらを見るものだから俺は何かしたっけ?と此処へ来てから今までの回想を1秒足らずで終わらせた。
俺は何もしてない……はず。

言おうか言わまいかと思案しているであろう京子を俺はただ黙って見ていた。それは彼女に掛ける言葉が見つからなかったからとも言えよう。それからしばらくして「よしっ、」と小さく意気込んだ彼女。そんな彼女を見て俺は本日2度目の疑問符を浮かべた。

「数馬さん。」

「ん? どうした?」

「数馬さんってその……私と一緒に居ると、つまらない、ですか?」

何を言い出すのかと思いきや。
はじかれた様に京子の目を見つめれば案の定、彼女は目元にうっすらと涙を溜めて此方の様子を窺っていた。なので言葉の最後が涙声だったのか……と冷静に判断する俺が居つつも彼女の言葉に否定すべく全力で首を振った。

「んな訳ねぇって。俺京子と居ると楽しい、けど?」

「けど数馬さん……さっきからずっと時計見てる…」

「…………。」


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