彼女の兄貴は俺の親友と呼べる仲であり、彼と行動を共にしていると自然に妹である京子とも顔見知りとなった。兄妹揃ってフレンドリーな性格なためか、時折家に泊まらせて頂いたり、家に上がらせてもらっている。

本日もそれは例外では無くって、俺は了平に勉強を教えてるために笹川宅まで顔を見せたのだ。それが30分前って事。

「お兄ちゃん、ついさっきランニングへ行ったわ。」

そう京子が言ったのも丁度30分前。なんたる入れ違え。確かに俺は約束の時間より僅かに早く来た。しかし30分待っても帰って来ないのは如何なものか。

「多分走る事に熱中して忘れてる……のかもしれない。ごめんなさい。」

「いーっていーって。何時もの事だし。もう京子の兄貴の行動には慣れたさ。」

申し訳無さそうに目を伏せる京子に「心配ない」と笑みを添えて手を振った。妹とは何処か似通った部分があると聞くが、フレンドリーな点以外は違う所が多すぎるな、と目の前の妹を見て兄を思い浮かべた。確かに似ていない……とは言えないが、何事も器用にこなす妹の京子に比べて兄貴である了平は、同時に2つ以上もの事が出来ない不器用さがあると親友である俺は思う。
チラリと腕に付けている真っ黒の時計を見れば、長針が僅かに歩みを進めていた。

京子に注いで貰ったお茶を啜りつつ「雨が降りそうだな、」と独り言を呟くが、偶然にも京子の耳に入っていたらしく「そうですね。」と返事を返してくれた。了平を入れて3人で喋る事が殆どなので、彼女と二人っきりになる事は……まぁ無い。
クラスの女子とは喋るに喋るが、彼女とは学年が違うので、クラスの話をする訳にはいかない。

なので必然的に無言の状態が続くのが当たり前で、遠くで響いている雷鳴が近くに落ちたと感じさせた。


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