美味しそうだ、と思いながらもう一度ケーキに目にやる。“HAPPY BIRTHDAY 数馬”と書かれたプレートが乗っていた。

「ん…っ」
『…リナリー』
「…あれ、数馬…。…!やだ私ったら眠ってた!?」
『うん。もうグッスリだったよ』
「数馬が帰ってくるまで起きてようって決めてたのに…。」

その決意をあっさり崩してしまったことにしゅんと項垂れる。明らかにテンションの下がったリナリーを見て数馬はくすりと笑い、美しい黒髪に包まれた頭にポンと手を乗せ撫でた。
部屋の照明がリナリーの髪に当たりキラキラと輝いて見える。まるで星が瞬いているようだ。

「…あのね、数馬」
『うん』
「昨日、誕生日だったでしょう?だからお祝いしようと思って待ってたのよ。ケーキも私が作って」
『ありがとう、でもごめんね。昨日のうちに帰って来れなくて…。』 時刻はすでに今日を終えて明日になっており。鳥も眠り一部の虫たちの鳴き声が静かに夜に溶け込む
もっと任務が早く終わって、もっと早く汽車が走れば昨日のうちに帰って来れたかもしれないと後悔が胸を過ぎった。感謝と謝罪を伝えればリナリーは ううん と首を横に振って。

「帰ってきてくれただけで嬉しいわ。おかえりなさい、数馬。お誕生日おめでとう」
『…ただいま、リナリー』

ふんわりと笑う彼女に釣られて数馬も笑い。
にじり寄る睡魔を押し殺して、2人っきりの真夜中のバースデーパーティーへと

優しい夜のおはなし
冷えた空気も暖かく感じた

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