任務でくたくたに疲れた体を引きずるようにして、夜もとっぷりと暮れてからその日数馬は教団に帰還した。 疲れによるものなのか、それとも時間によるものなのか分からない睡魔に襲われながらも宛がわれた自室へと歩き。
建築の材料として使われている石畳の小さな段差にすら躓いてしまうほど、足元も覚束ない。けれどここで倒れてしまってはきっとそのまま寝てしまい、挙げ句それをコムイだとかに見つけられてしまっては厄介なことになる。
目が覚めたらよく分からない部屋に入れられ手術台とかに乗せられているんだきっと。そんなホラーみたいな展開になどならないだろうと思うけれど、コムイならやり兼ねないそして疲れているのもあって妄想は悪い方向へとばかり進んで。
いけないいけないと頭を振っていれば、ふと立ち止まった。そしてパッと後ろを向き、苦笑いを一つ

『(自分の部屋素通りとか…。ホント、疲れてるな…。)』

照れ隠しに頬を掻きたくても腕を上げることが億劫で。まるで手首に重りを括り付けられているようだ。目撃者がいなくてよかったと安堵しながら、来た道を少しだけ戻る。 大した造りでも何でもない木製のドアの前へと着き、メッキの剥げかけているドアノブを掴んだ。力を入れずともくるんと回るそれ。
ドアノブとしての役目を果たしているのか甚だ疑問だ、近いうちに取り替えてもらうべきだろうと考えながら室内に入ればすぐに違和感に気付いた。
耳を澄ませずとも聞こえてくる。人の呼吸音。

『…?』

訝しげに眉間にシワを寄せながら首を傾げ、確認のためもう少し部屋の奥へ進んでみる。 ワンルームの部屋のド真ん中、置かれたテーブルに俯せになってリナリーが眠っていた。
どうして自分の部屋にリナリーが?
眠気でボーッとする頭で彼女の支えとなっているテーブルを見れば中心にはデコレーションされたチョコレートケーキに手作りと見られる料理の数々。


prev:next
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -