胸のサイズというものは女にとって大変に意味のあるものだ。小さければ小さいでコンプレックスになり、大きければ大きいで以下同文。
小さいよりは大きい方がいいだろうと言う人は多くいるが、それは自分の胸が大きくないから言えることで。胸のことを言われる度に彼女はため息を吐き、気分を暗く落ち込ませていた。

「どうせオレの価値なんか…。胸のデカさにしかねぇんだ…。」

うっうっとぼやき嘆き半泣きになりながらとぼとぼと歩く。ただ歩いてるだけだというのにたゆんたゆんと豊満なバストが揺れて。通り過ぎる男の誰もがその大きなバストに釘付け。ディーノはほとほと嫌になった。ちらりと見下ろせば飛び込んでくる谷間。これでもか!と言わんばかりに存在を主張するこの脂肪の塊が気を重くさせる。

嫌だと言うのならシャツのボタンを締めてしまえばいいのだが、そうしたらそうしたでボタンがはち切れそうになって余計にアレだ。ならばそうならないサイズのを着ればと人は簡単に言うが、今度は胸以外のサイズが問題になってくる。
余るのだ。それはもうたっぷりと。一回やってみたらシャツに着られてるみたいになってどうしようもなかった。

「(オーダーメイドもなんかなぁ…)」

既製品ではなくオーダーメイドにしたならば、全てが自分のサイズなのでどこかが余るということはない。けれどその際どうしても必要になるのが採寸で。その採寸がディーノは嫌だった。自分のバストサイズを目の当たりにしてしまうから。

毎日下着を着けるからサイズには触れてしまうのだが、しっかりとメジャーを使って測られるのが…。それも他人の手によって。絶対デカいと呟かれる。嬉しくはないが自信があった。
はぁ、と重いため息を吐きながら人目から逃げるように公園に入る。ここは日本。イタリアほどナンパが多いわけではないが、それでも無い訳じゃない。
そのナンパ男の全員がディーノの顔ではなく胸を見ながら話すのだからたまったもんじゃない。見た目に沿ぐわず男らしくどっかりと手近なベンチに腰を降ろした。

「(胸小さくする手術でも受けようかな…)」

下を向けば視界の半分を占める肌色、胸。
今日もこれが原因でディーノは気分を滅入らせていた。発端はとても些細で大したことのない出来事。

いつも通りこの日本は並盛にいる弟分に会いに来た。和やかに会話を楽しんでいれば一緒に住んでいるランボが毎回のごとく本日も大暴れして。
宥めるように大人しくさせようとしたらランボがディーノの胸を指差し声高々にこう言ったのだ。

「ランボさんは乳牛に指図されたくないもんね!!」

あの衝撃ったらない。


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