現在時刻 17:58
現在地 並盛

息を切らして走る。
これぐらい何ともないはずなのにこうして息切れするのは逸る気持ちのせいか、それとも体に起きた変化のせいか。どちらにせよ心は躍る。
ずっと夢見てきた女の体。今までの男という性別を捨てるのは流石に少しだけ戸惑ったけど、それ以上に彼に愛してもらえるという期待が大きかった。元から友人という立場でそれなりに好感度はあった。
それが女になったとあれば貴裕のことだ、手を出さないワケがない。そうなればあの手この手で丸め込んで…ね。貴裕は頭は良くないからきっと簡単に事は進むだろう。
もう少しで貴裕が出勤してくる時間。会ったら何て言おう言葉を掛けよう。ああ頭の中がぐちゃぐちゃして―

『あれ?もしかして恭弥じゃね?』
「 ! ぁ…っ 貴裕…!」

興奮と期待と一抹の不安を胸に、貴裕が働いている店へと向かっていれば後もう少しでというところまでまさかの再会。思わず声が裏返ってしまった。変に思われなかっただろうか、とか女になった僕をどう見てくれるのかとか色々なことが頭を過ぎる。10年ぶりとは行かないまでも久しぶりに見る貴裕の姿は最後に見たときより大人っぽくなっていて。ホストっぽい(と言ったら偏見かもしれないけど)アシメヘアをしているけれど、そこまでチャラくはなってはいない。いい意味で貴裕らしさが出ていて、カッコ良かった。胸がきゅんと鳴って内心慌てる。

『おわーマジ恭弥じゃん!え、お前こんなとこで何してんの久しぶり元気だった連絡ぐらいしてくれたって』
「待って貴裕落ち着いて。質問そんなにされても答えられないよ」
『あははゴメンゴメン!ついテンション上がっちゃってさー』

へへへ、と軽く笑って謝るところもその笑顔も昔とちっとも変わらない。大人になって多少なりとも常識は身についているようだけど滲み出る頼りない感じも相変わらずのようだ。そんな所に何故かきゅんきゅんしてしまい恋に落ちて。そうして今に至る。

ああどうしよう胸がドキドキする。頬が熱くなって声が喉に詰まって出てこなくなる。何を話そうかって考えていたハズなのに頭は真っ白になってしまった。おかしいな、貴裕と話すのは何も今日が初めてじゃないし友人としてだけどずっと傍にいてきた。なのに、どうしてこんなにもドキドキとして堪らないんだろう。女になるってこういうことなのかな…。



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