もう随分と昔から彼が好きだった。
それこそ中学の時からだから10年の間片思いしていることになる。自分でもなかなか一途だと思う。10年間もの1人の人間を想い続けてきたのだから。流石に途中何度かいい加減未練を断ち切って新しい恋でも見つけようかと考えた事もあったけれど、その度に彼の顔が浮かんでは消えて。本当に上手いタイミングでふと過ぎるものだから一度僕の頭の中に何かそういう装置仕込んだんじゃないかって本気で思ったよ。まぁこの僕がそんな隙作るワケないんだけど。

―10年も、それだけ想っていれば一度や二度でなく何度も告白しようと考えた。けれど結局一度も言えずに今日まで来てしまい。
だって、出来るはずないんだ。彼は僕と違って普通に女の子が好きだから。それもかなりの女好き。そのあまりか今ではホストをしている。男である時点で恋愛対象にはなれない。せいぜいが友情止まり。
勿論それだけで諦められるワケないからそれとなーくアプローチはしてきた。女好きで有名な彼の事だから気持ち悪がられないようさり気なく。


「僕って健気だと思わない?」
「全く思わん…!それで一体何がしたいんだ貴様はっ」
「だから実験台になってあげようって言ってるんじゃないか」

どれだけ必死に且つさり気なくアピールしても気付きもしなかった彼、貴裕。僕の気持ちに気付きもしなかったどころか、見せつけるかのように女をとっかえひっかえ。あれは本当に風紀を乱して腹立たしかった。嫉妬も相俟って八つ当たりに咬み殺した草食動物たちは今思い出しても無惨だったと思う。反省も後悔もしてないけど。そうして貴裕を想って10年経って気付いたというか、一つの結論に至った。
そうだ、女になろう。
思い立ったが吉日、すぐさま僕は行動に移した。それは勿論手術で男性器を取り去るなんてものではなくて、もう遺伝子レベルから女になるようなもの。精巣の代わりに卵巣があって子宮があってちゃんと子供が産める本物の女の体。貴裕は家庭を持ちたい子供が欲しいってよく言ってたから。
出来るのかって?
出来るよ、裏の世界の技術力ならね。
幻術を現実にしてしまう装置を作り出すような天才の中の天才、そしてアルコバレーノの一角を担うヴェルデがいれば不可能じゃない。

「大人になれば多少の常識を持ち合わせるかと思っていたが…。相変わらずの唯我独尊っぷりだな雲雀恭弥」
「常識があったらこんな世界でやっていけないよ。…で?」
「なんだ」
「とぼけないで。性別変えるような薬、もしくは機械作れるんでしょ。実験台になってあげるから用意しなよ」

うわぁ… という台詞が聞こえてきそうなほど引いた表情を見せるヴェルデ。思わずトンファーを袖から手へと滑らせれば目に見えて慌て始めた。こういった科学者、要はインテリな草食動物は暴力をチラつかせればすぐ言うことを聞く。扱いが楽でいい。
10年経っても変わらない、赤ん坊の姿のその頬をトンファーでピタピタと叩けば小さく波が立った。

「ま、待て!分かったお前は女になりたいんだなっ?」
「さっきからそう言ってるよね」
「念の為の確認だ!…一応、出来ないこともない。不可能と呼ばれるあらゆるジャンルに手を出していた時に薬物投与による性転換も攻略した」
「うん」
「ただそれ以来手を付けていないからな。今一度確認して精度を上げたい。構わないか?」
「どれぐらい掛かるの?」
「3日もあれば十分だ」

それぐらいなら許容範囲内だろう。
一つ頷くとそれ以上の会話はないと、2人同時に背を向けた。大丈夫、3日なんてあっという間さ。今まで10年待ったんだからたった3日なんて余裕で待てる。その間適当に任務をこなしていればいいんだ。あぁけれど、今から3日後が酷く待ち遠しい。



prev next
bkm
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -