はたはたと干した洗濯物がはためく。物干し竿に吊された洗濯ピンチには男物の下着と女物の下着。パッと見ならカップルが同棲してるのかと思うけれど、ところがどっこい。これはそんな甘いもんじゃない。

「貴裕!私のじぇにふぁーをどこへやった!」
『ああ、それなら今ベランダに…』
「何ぃ!?貴様ぁ、じぇにふぁーに何をした!」
『何って日光消毒だよ。ぬいぐるみにとっての湯浴みってやつ』
「っじぇにふぁー…っ」

オレがそう言ってやれば慌ただしくベランダへと向かう。そこでは洗濯物と一緒にジェニファーこと熊のぬいぐるみがぶら下がっていて。声にならない悲鳴が上がった。

「わ、私のじぇにふぁーが絞首刑に…っ」
『よく見ろ首絞めてないから!耳をピンチで挟んでるだけだろっ』
「拷問だ!この鬼畜め!」
『お前本当に戦国武将か…?』

そう、このぬいぐるみの処遇についてぎゃんぎゃん騒いでいるのは関ヶ原の戦いで有名な石田三成・戦国バサラVer.。何が原因でかは分からないがこっちに来てしまったのをオレが保護したのだ。
公園で雨に打たれ呆然と立ち尽くす三成を見たときはとんでもない庇護欲に駆られたもんさ…。見知らぬ他人を家に連れ込むなんてこれが最初で最後だと思う。そっからあれよあれよという間に一緒に暮らすことになって。まぁ最初からそのつもりだったから特に何も言わないけども。だがしかし一番の問題はその後発覚した。

『(それにしても今日はいつも以上に短気だな…。……まさか)ちょ、三成。お前一回トイレ行ってみ』
「 ? 何だ藪から棒に」
『いいから』

軽く背を押すようにしてトイレへと行かせる。訝しげな表情を浮かべてはいるものの素直に言うことを聞きトイレに。
数秒後、声はしなかったが明らかに暗く重い雰囲気が洗面所のほうから伝わってきた。やっぱりな、オレの勘は当たってたようだ。その雰囲気を醸し出すだけあってどんよりと沈んだ顔つきで三成が戻ってくる。

「貴裕… 何故私が月の穢れだと分かった…」
『いや、何かいつも以上にイライラしてるし時期的にもそろそろかなって』

そう答えるオレを忌々しげに一睨みすると、下着を変えるべく自分の部屋に一旦引っ込む。これが一番の問題というか変化だった。



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