失望と悲しみを含んだ瞳で山本を見据えればギリッと下唇を噛んで俯いた。どうやら事の重大さにやっと気付いたらしい。先ほどまでの不遜な態度は無くなっていた。

「オレは…っ」
『頼む、もう何も言わないでくれ。部の為を思うなら潔く辞めてくれないか』
「…………。」
『コレから俺たちは試合がある。3年にとっては引退試合だ。分かるだろ?台無しにされたくないんだよ』

3年間の集大成とも言える最後の試合。それが中学生活の締め括りとも言えるし、何よりその試合を後輩たちに見せてやりたい。そうして少しでも何かを残してやれたら。それだけは、邪魔されたくないんだ。

『頼む』

絞り出すように言って頭を下げる。
部長が部員に頭を下げるなんて前代未聞だろう。だけどなりふり構ってられない。部を、部員を守らなければ。頭を上げることなく、腰を折って廊下の床を見つめていれば前に立っている山本が動いた気配がした。

「…っ今まで、ありがとうございましたっ!」

俺と同じように頭を下げる気配。衣擦れの音。そして告げられた言葉に少しだけ目を見開く。ジワリと何かが目に滲んだ。ゆっくりと顔を上げれば、山本が教室に入ってゆく姿が目に入る。望んで、此方から言ったこととは言えやはり居なくなるのは悲しい。けれど仕方ないとも思う。せめて山本がイジメに荷担などしなければ、と今更なことを考えた。
切り捨てるなんつーことをしたんだ。次の試合は必ず勝たなければ。


溺れた魚

嫌われ夢とか見てて普通にこういう事あるだろって思って。

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