「な、なんで…!納得出来ません!理由は何っスか!?」
『…お前、本当に分からないのか?』
「分かるワケないじゃないスか!」

不条理不平等不平不満。そんな言葉が伝わってきそうな顔つきだった。けれどそんなものは今はどうでもいい。この後に及んで、と言うべきか。分からないっつーことがまず理解不能だわ。きっとそれぐらい正当性があると、自分の行動について思ってるんだろう。ため息を一つ吐き出して山本を見据えた。

『じゃあ言うけど、お前最近いつ部活に来た?』
「…っ」
『覚えてないだろ?ちなみにもう3ヶ月来てないからな。怪我したとか納得出来る理由があって部活休むんならまだイイけど、お前さっきの3人と放課後遊びまくってるんだろ? 困るんだよそーゆー浮ついた態度。下級生に示しがつかない。』
「でも、だからって退部にしなくても…!」
『他にもあるわアホ。』

まぁそれだけでも十分退部させる理由にはなるけども。文化部だったなら多少サボっても気にしない所はある。幽霊部員なんつー言葉があるぐらいだし。だがしかし、俺らは運動部。野球部だ。精力的に活動をしてるからこそサボリには大変厳しい。
今まできちんと部活に来て、エースなんて呼ばれるような奴がそんな事したら失望も憤りも倍だ。
でもそれ以上に問題なのは、

『お前、イジメの主犯格らしいな』
「っ!」

イジメをする側に加わっているということだ。

『さっき教室にあった誹謗中傷書かれた机の主、ソイツをイジメてるらしいな。大人数で寄ってたかって』
「あれは!萩野が悪いんスよ!愛美を貶めようとするからっ!これはその報復です!!」
『そんな事に興味はねぇよ。重要なのはお前がイジメの加害者に加わっているかいないかだ』

正直俺は聖人君子でもなければ正義感が軒並み高いワケでもない。イジメを無くしたいと思うワケでもイジメられてる奴に同情するでもない。悪い事だと分かっていてもそれを無くせないのが社会の現状だ。しょうがないとも思わねえが、ただ一つ言うならば。

俺は部活で一番上の人間で、他の部員の事を考えて行動して時として責任を追わなければならない立場にいる。という事だ。加えて俺らは試合にも出ている。部員が不祥事なんか起こしたら今後に控えている試合も辞退せざるを得ないし、最悪廃部だ。それだけは避けなければならない。今まで、俺らの先輩たちが築き上げてきた数々の栄光をこんな事で潰すわけにはいかないんだ。無情だと言われてもいい。後進を守り育てる為に出来ることをするだけだ。

『…なぁ、分かるだろ?例えどんな理由があっても人を傷付けていい事はない。法律として決まってんだ。挙げ句部活に所属してるヤツがンなことしてたらとばっちり食うのは他の部員だ。』
「けど!オレ野球部のエースっすよ!?それが辞めたら試合なんて、」
『納得出来ると思うのか?部活もサボってばかりでイジメに荷担するようなヤツをエースって。自分たちは汗水流して怪我をして!体中泥だらけになりながら必死でレギュラーになろうって言うのに!エースな山本は部活サボって悠々自適に遊びまくってよぉ!』
「っ!」
『…それにお前、聞いた話だとバットで人殴ったらしいじゃねぇか。野球部にとってなくてはならない物を人を傷つける凶器として』
「っ!」
『所詮その程度だったんだろう? 山本にとっての野球って』


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