傷ついたと言わんばかりの表情と声。それに慌てて言葉を付け足すがしょんぼりと結花は俯いてしまって。自分の仕出かした行為が彼女を傷つけたのだと感じると、途方もない罪悪感に苛まれる。それ以上言葉を紡ぐことが出来ず結花と同じように口を閉ざし俯いてしまった。沈黙が室内を包む。痛々しいまでのその空気に居心地悪くも居座っていれば、ポツリと結花が口を開いた。

『…それで?』
「う゛ぉ…?」
『それで、結果はどうだったの?私は黒?』
「いや…。結果としては白なんだが原因となった噂の出所が不明でなぁ。いくら洗っても見つからねえ。それで当事者のお前にも話を聞いてみようとだな」
『そう。…まぁそりゃ当然よね。その噂の出所、私だから』
「はぁ!!?」

思いがけない言葉にバッと結花へ顔を向ければ、先程の傷ついた表情はどこへやら。満面の笑みを浮かべていやがった。そしてその笑顔のまま、事の顛末を口にする。

『最近ちょっとマンネリ気味だったでしょ?あ、もちろん私が勝手にそう感じてただけなんだけど。それを払拭する為にと、スクアーロにもっと私のこと考えて欲しくって。で、頑張って私が浮気してるって噂流したの!すぐにバレるかなと思ってたんだけど案外上手くいったわね。私情報操作の才能あるかも?』

な、
なんだとぉぉおおお!!?

「う゛ぉおお゛い!!テメェんなことの為にあんな噂流したのかぁ゛!?」
『うん』
「うんじゃねぇ!お陰でオレは散々振り回されたんだぞぉ!!」
『うふふ。でもその間ずぅっと私の事考えてくれてたでしょう?』
「…っああ」
『任務中も剣の修行中も夢の中でさえも。四六時中私の事でいっぱいだったでしょう?私の事でハラハラしたりヒヤヒヤするスクアーロを想像しただけでスッゴくワクワクしたわ!』

イタズラが成功した子どものようにハシャぐ結花。正直彼女の言葉は全て当たりだった。任務中、命を危険に晒してしまうほど考え込んでいたし、人生を掛けている剣の修行中もふとした瞬間に結花のことを思い出し手につかなくなっていた。今までに無いぐらい、そう一日中結花のことで頭がいっぱいで。オレは上手い具合にコイツの手の平で踊っていたらしい。反省の色を見せない笑顔で結花はオレに問うた。

『ねぇ、こんな女は嫌い?』

返ってくる返事が分かりきっている顔で聞いてくるのだから困った女だ。嫌いになるどころか寧ろ益々お前にハマっちまった。そう口にする代わりに噛みつくようなキスをしてやれば、嬉しそうに結花はオレの首に腕を回した。


美しい罠

image song:Per/f/ume【スパイス】

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