『スッキリしたかい?』
「はい、大分。…すみませんあんなに愚痴っちゃって…。」
『構わんさ。促したんはこっちだし』
「…ありがとうございます」

スッキリしたとは言っても、よくもあれだけベラベラと話せたなと今度は逆に気恥ずかしくなってきた。この女は事情も何も知らないのに愚痴られても困るんじゃないか。促されたのは確かだが、もっと理性的に行動すべきだったのでは… と中学生らしからぬ大人びた考えをしてしまう。
恐らく、この女の前では背伸びなどせず有りの侭の自分でいていいんだろう。そうすべきなんだろう。
だが人からどう見られるかを長い間気にして生きてきたのだ。今更、難しい。
女が新たに煎れてくれたハーブティーを、一口味わう。

『さーて、それじゃ吐き出すもん吐き出したワケですしーぃ』
「…?」
『解決へと導きましょうかね』
「っ出来るんですか!?」
『出来ますとも。それにはもちろん、お兄さんの努力が必要なワケだけど』
「俺に出来ることなら!」

喰い気味で返事をすれば女は『いい返事だ』と言って笑った。唇に挟んだ煙管からは静かに煙が上がっている。それが随分と見慣れたもののように感じた。カップを握り締める手に力を込める。占い師にそこまで視えるのかと一抹の不安が過ぎるが、どこかでこの女なら大丈夫と思い始めている自分がいた。
並べられたタロットカードを見ながら、女が口を開く。

『大丈夫、お兄さんは1人じゃない。よーく目を凝らして周りを見てごらん。捕らわれてないのがいるよ』
「本当ですかっ?」
『マジマジ。多分もうすぐ声を掛けてくれっから。そしたら、後はそのマネージャーさんを観察して矛盾… 綻びを見っけんの。難しいかもしんないけど頑張れば必ず報われる』
「…っ」
『…それでも、どうしても無理だったら。ホント頑張ってもダメでしたってなったら』
「…なったら?」

ゴクリと唾を飲み込む。その先何を言うんだろうか。もう、戻れないとでも?諦めろとでも?一つ覚悟を決めて女の言葉に全神経を集中させた。

『ここに連れて来んさい。』

けれどそのどれもでも無く。

『そのマネージャーさんとメロメロになってるの全員、連れてき。』
『お姉さんがなんとかしちゃる』

そう言って女はまたニヒルに笑って。それがとても頼もしく見えた。


先導者の指先



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -