そんな仲間を、人間を、アクマなどという奇妙な兵器の為に使い、殺すヤツらと仲良しこよしなんて出来ようハズもなかった。

『(大体なーにが“希望”だよ!気持ち悪っ!肌に合わねぇ!!)』

希望。生きる上での外せない光。光明。救い。そんなものが自分の根底にあるメモリーだと思うとむず痒くてしょうがない。嫌がるのを分かっていてノアたちは名前ではなく敢えてメモリーで呼んでくるし…。正直ここに連れて来られてから良い思いをしたことがなかった。

『(どいつもこいつもイイ性格してやがる…!)』

爆発してしまいそうな怒りを発散させる為、近くにあった大きな大きな熊のぬいぐるみを殴る。
なかなかの勢いで繰り出されたパンチだったが、ぬいぐるみはボフッと軽い音を出すだけで。それにチッと舌打ちをすれば殴った反動でか、コロンと熊のぬいぐるみの横から何かが出てきた。何だと見やればそれは小さなうさぎのぬいぐるみ。
途端勇介の中にあった怒りや憤りが嘘のように静まった。そぅっとそのぬいぐるみを持ち上げる。

『…そういや、こないだ拾ってきたメイはまだ小さかったな…』

思い出すのは小さな女の子。
ここに来る少し前、親に捨てられ路頭に迷っていたのを拾った。新しい仲間と。メイと名乗ったその子は親に貰ったのだろう、ボロボロのぬいぐるみをずっと抱えていた。いつか新しいのを買ってやろうと、みんなで小銭を集めていたのだ。

『コレを土産に持って帰れば喜ぶかな…』

ずっと逃げ回っていて精神的にも肉体的にも疲れたのか、勇介はその場に座り込んでしまい。背を預けるようにぬいぐるみに寄りかかれば思いの外良い感触。あの町に居た頃はこんな柔らかいベッドはなかった。環境的にはこちらの方がいいのだろう。けれどやはり心が求めるのはあっちで。

『ぜってー帰ってやる…』

ほんの10分。10分休むだけだと己に言い聞かせながら瞼を閉じた。


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