まさかたったそれだけか?
難しい事でもないと確かに言っていたが、いくら何でも簡単すぎやしないだろうか。 しかし、ふとした瞬間冷や水を打ち掛けられたかのように急に冷静になった。 “協力”がどのような内容であるか。彼女はそれを言っていない。 なる程、そういう事か。様々な形で要求する全てを協力と仰げばそれは一つとして零さず“協力”の枠にハマる。それらをひっくるめて、だ。
まだまだ若く、熱情のままに戦場を駆ける幸村であったが流石に幾多の戦を経験しているだけあった。ニッと輝く太陽のような笑みを浮かべるとドカッとその場に道場座りの形で腰を下ろす。

「某、真田源二郎幸村。まだまだ若輩者故貴殿の期待に添えることは相成りませぬ。然れども、某に出来うることなれば全力を持って挑ませて頂きますれば。何卒、貴殿の知恵をお貸し頂きたく!」

そしてそのまま深々と頭を下げた。
その、要約すると“出来ないことは出来ない。けれど出来ることは力いっぱいやるよ!”という言葉に今度は女がニッと笑い。満足げに一つ頷くと頭を下げたままの幸村の前に膝をつく。 掛かる影、と近くなった気配に幸村はパッと顔を上げた。思った以上の近さに体がビクつく。

『なかなか良い口上だったよ。私の言葉の裏に気付き、それに対する返事。君は磨けば光る原石だな』

捻らない真っ直ぐな褒め言葉に恥ずかしくなる。瞬間的に顔に熱が集まり、それを悟られまいと俯けば笑い声が降ってきた。ああ、やはり女子は苦手だ。こんな場所でも悩まされる羽目になるなんて、と頭の中で呟き唸る。当分この苦手意識を克服出来るとは思えない。
そんな、1人葛藤する幸村を知ってか知らずかスッと女が手を差し出した。

『取りたまえ。帰りたいんだろう?』
「無論!」

言葉に促され、勢いよく女の手を掴む。
必要であったとは言え、女子の手を掴んでしまったことに動揺しかけるがそれよりも早く意識が霞み始めた。 閉じていく瞳、狭まる世界。
ふらりと体が傾き、倒れてゆく。それに抗うことなく身を任せながら最後に女を見る。唇が動いた。
『約束、忘れるなよ』

暗転。


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