手に伝わる笹川の温度、柔らかさ。何もかもに心臓が脳が体が反応する。一つも忘れてしまわないようにと。一つも零してしまわないようにと。告白してダメだったとしても、きっと今日の思い出を胸に中学生活を過ごしてゆける。大袈裟なんかじゃなく、本当に。繋がってた手と手。違う体温。
緊張か暑さか、手の平には自然と汗をかいてしまう。何だか情けなくて涙が出そうになる。どうか笹川にこの手汗がバレませんように!と願うが、きっと気付いているだろう。分かっていながら笑いも言いもしない笹川に静かに惚れ直した。恋したのが彼女でよかった。

「あ、」
『どした笹川。何か食いたいもんあった?』
「うん、チョコバナナいいなって思ったんだけど…」

言いながら指差した先のチョコバナナの店には沢田たち4人がいて。外でも見ることになると思わなかった男装女子とその取り巻きに眉間にシワを寄せてしまった。何でいるんだクソッたれ!

『…他の店にしようぜ』
「うん」

繋いだ手を軽く引っ張るようにして言えば、笹川はすぐに気をこちらへと向けた。何となく優先されている気がして胸が暖かくなる。意識して笹川を見れば向こうもオレを見てくれて。照れくさくて2人同時に笑ってしまった。やべぇ、オレ今人生で一番幸せかも…!もう一瞬でアイツらの事なんか吹っ飛んじまったぜ!嬉しいも悲しいも全部笹川に左右されてる。情けないとも思うけど、同じぐらいただ楽しかった。

―そんな楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
射的、ヨーヨー掬い、リンゴ飴にたこ焼き…。これでもかってぐらい夜店を満喫して。紛れもなくこの夏一番の思い出が出来上がっていた。途中騒がしくなった境内のことはスルーしておく。時計の針は19時30分を指した。それと同時に打ち上がる花火

「わぁっ、きれーいっ!」

お前のほうが綺麗だよ。なーんて言えるワケねぇ!

『同感。やっぱ花火見ねーと夏が来た!って感じしねぇよ』
「うん。風物詩だもんねっ」
『おう、それそれ』

花火をより鮮やかに見るため、夜店の通りから少し外れた所で夜空と花火を見上げる。


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