これは今度と言わず今日明日にでも手伝ってやらねば。せめてこの同僚がしなくていい仕事までしてないかをチェックして、後は計算なんかも…。
慰める訳ではないが、落ち込んでいる同僚の肩をポンと叩いた。

『まあまあ落ち着けって。赤犬大将見てみ?まるで初恋を楽しむ少年のよう、』
「それ私の目を見て言えます??」
『ohー…』

ビリリと低く響く声。それに釣られて顔を上げればこの世に蔓延る負を全て背負ったような顔つきの男がトレーを持って横に佇んでいた。その顔は土気色で。隣に座る同僚よりも事態は深刻らしい。下手したら今にも海に飛び込んで自殺しそうだ。そんな彼もまた勇介と同じく文官で、あの赤犬の部下だ。

優男だの何だのと言われていたのに今では面影もない。無論悪い意味でだ。頬がやつれ、目の下には酷い隈。目に光もない。思わず無言で隣の椅子を引けばよろりと倒れ込むように座った。まるで通夜のような状態の彼の背中をそっと擦る。

「お、お疲れ…。」
「何がお疲れですかそんな分かりきった事聞かないで下さいこれがお疲れに見えないとでもならあなたは相当抜けてるんですね羨ましい限りですはーぁ死にたい」
『よーし分かった取り敢えずお茶飲もう』

トレーに乗せられていたカップを両手で持たせ鬱憤を一度鎮まらせる。一気にお茶を飲み干す姿は本当にお疲れとしか言いようがなかった。本人的にはそんな言葉じゃ間に合わないぐらいらしいが。
コイツに軽口を叩いてはいけない。黄猿のとこの同僚とそうアイコンタクトを交わし小さく頷いた。ちょっとでもふざけたら即どちらかの死に繋がる。基本文官はみんなインテリ系だがこの病んできている同僚は戦闘面でも秀でているたまにあるく訓練で手合わせしても必ず負ける。勝ったことは一度もない。

「もう本当無理です無理無理。耐えられない。何が楽しくて一日中頬を赤く染めてあの女の写真眺めてる大将と仕事しなきゃならないんですか死ね」
「ヒェッ」
『そりゃ… 辛いな……』

彼の吐き出すような呟きにサッと顔を青ざめさせたのは勇介たちだけではない。それが聞こえていた周りの海兵までもが血の気を引き、食事の手を止めた。想像してしまったのだ。あの赤犬大将が頬を赤く染めた顔を。一気に食欲が失せたどうしてくれる。

『(それにしても思ってた以上に被害が甚大だな)』

目に見える仕事の怠慢。書類だけならまだしも、巡回船に乗ることも兵の訓練に携わる事も少なくなってきたという。
これで彼女が海賊側に付いたら海軍は地獄を見ることになる。本格的に平和なところへ異動しよう。


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -