あぁしまった。食事の時間をずらすか外に行けばよかったと勇介は後悔した。何故なら目の前で件の彼女と三大将が仲睦まじく昼食を摂っていたからだ。

「ハイ ×× あーん」
「オォ〜… クザン死にたいのかァい? ××にアーンするのはわっしだよォ〜」
「アホどもがぁ…。××、ワシはおどれにしてもらいたい」
「え、えぇ!?」
『(何これスゴく気持ち悪い)』

もし本当に吐いたら医療費を請求してもいいだろうか。きっと経理も分かってくれる。それぐらい今の三大将の現状は海軍全体に広まっていて。人の口にとは建てられないとはよく言ったもので。箝口令を敷こうともやはり意味は無かった。既に海軍支部にまで伝わっていることだろう。三大将を見たことすらない海兵も。
話だけ聞いて憧れていた者も少なからず居たろうに。

自分に被害が及ばなければ彼女らがどうなろうがどう周りに思われようが勇介はどうでも良かった。けれどそれを目の前で繰り広げられたいかと言われれば首は横に振らせてもらう。許されるなら彼らを食堂から追い出したいマジで。
その思いは皆同じらしく。嫌なものを見るように顔を顰めたり、見たくないと顔を背けたりと十人十色。せめてウォークマンがあれば耳にイヤホン突っ込んで外からの音をシャットアウト出来たのに。パシフィスタ作るぐらいの技術があるなら、そういうのも作ってくれ。

「勇介ー」
『んぉ、』

声を掛けてきた同僚に手を上げて応え、その隣に腰を下ろす。彼は同じく文官で黄猿の部下。アレの皺寄せが来ているのだろう。彼の目元には隈がくっきりと。勇介のように要領が良くはない彼。その仕事がどれ程滞っていることか。心中お察しします。
面倒だけど今度手伝ってやろう。職場の人間関係は円滑にしておくに越したことはない。…面倒だけど。

『お疲れ。近くで見るとやっぱりスゴいな、アレ』
「だよなぁ。つかそもそも見た目もそうだけど年齢的にもアウトだろ」
『完全にロリコンですね。ありがとうございます』
「アレはもう…。親子と言っても差し支えないのにな」

10代の少女と40、50行ったおっさんがいちゃつくのはやはり危ないものを感じる。彼らが正義の味方でなければ100%通報される。おっさんが少女を取り囲むなんて犯罪の匂いしかしないだろ。
賑わう4人をちらりと見つつそれでも声を潜めて食事を再開した。

『どうよ、最近。黄猿大将の方は』
「どうも何もアレ見りゃ分かんだろ。執務の方は遅れがちだけどどうにかこうにか?処理はしてる」
『その遅れがじわりじわりとやってきてる訳ねー。マジ乙』
「ホントやってらんねーよ…。残業だけならまだしも休日出勤までする羽目になってきたし…。」
『……ちなみに今、何日連続勤務中?』
「20日」
『うわぁ…。』

恐らくそのどれもが深夜近くの残業をして家に帰ってという形態になっているだろう。家には寝に帰っているだけ。勇介はこういうのを何と言うか知っている。ブラック企業だ。
自分は上司の仕事は上司のもの。当然のごとく責任も上司にあると考え区別しているし自分が過剰業務を受けないよう仕事内容のチェックは怠っていない。だからこそ多少の残業はあれど、同僚ほど大変な目に遭っていないのだ。
これはその内倒れる。前世の友人がそうだった。口から血を吐いても尚働けと迫られていた。



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