※転生トリップで傍観。
※逆ハー少女がいますが空気。
※オリキャラがでしゃばる!





自分以上に数奇な運命を辿っている人間はいないだろうなぁと、誰に言うでもなく勇介は思った。例えかの有名な海賊王であろうとも、死んでまた生まれてその挙げ句前世の記憶を保持したままの人間なんて会ったことは無いだろう。それどころか前世では漫画として描かれていた世界に生まれるとは。一体何がどうなったらこんな事が起こるというのか。

『(強くてニューゲームとかやっぱ都市伝説だよなー)』

こんな風に余計なものを盛り込むぐらいなら、もうちょっと色々付け足して欲しかった。チートとは言わないがせめて大将ぐらい強ければ海賊とか…。いや、法治国家日本で育ち一度人生を全うした身。その体には生まれ変わった今でも人を傷つけてはいけない。人から物を奪ってはいけないという教えが染み付いていた。

だからこそこうして海軍に入っても勇介は文官として勤めていた。生前は会計事務所に勤務していたお陰で計算するのも、書類を捌くのも手慣れたもの。まさかほんのちょっと欲を出して、折角だからキャラを近くで見たい→海賊はちょっとなぁ…→そうだ海軍の事務ならイケる! なんて不純な考えで応募したら即採用とは…。前世の就活地獄はなんだったというのか。
命の危険も無い。安定した収入。保険も完備。多少の残業はあるものの休日はしっかりある。

『(ブラック企業に見習わせたいなあ…。マジ海軍うめぇぞこれ…。)』

定期的にある戦闘訓練(文官も強制参加)を除けば良い職場である。ふんふんと鼻唄まじりに書類をまとめて、山積みになったそれの一番上へ。また随分高くなったなぁと他人事のように思う。まぁこれを処理するのは自分ではない。大将青雉だ。自分の首をこれでもかと締め上げている青雉にはドM疑惑を持っている勇介であった。

海軍の文官となり、更にはその有能さを見抜かれて青雉大将の文官へと抜擢され早2年。彼が楽をしたいが為に選ばれた気がしないでも無いが。給料はいいので文句は言わない。書類を滞らせて注意されるのは青雉だ。お前も叱れと以前元帥に言われたが、大した力もない一文官が海軍最高戦力にそんな事出来るはずもない。背筋をしっかり伸ばしハッキリしっかり伝えた時のセンゴクの苦虫を噛み潰したような顔は今でも覚えている。

コーヒーを新しく淹れるため立ち上がり、ついでとばかりに窓の外を見る。眼下に広がる中庭では今日も今日とて変わらず一人の少女を三大将が取り合っていた。あの調子では黄猿と赤犬のとこの文官も大変な思いをしているに違いない。

『(今度飲みに誘うか…。)』

店では誰が聞いてるか分からないから、愚痴るのも憚られる。ならば宅飲み一択。きっと酒が進むことだろう。


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