※名前変換無し。

天岩戸という神話がある。
太陽神である天照大神が岩戸の中に隠れてしまったせいで世界から太陽が消えてしまい人々が大変困り果てた、という話だ。天照を岩戸から出すために様々な人や神が四苦八苦。ついにはアメノウズメという踊り子の舞いに誘われて姿を現す。初めてこの話を聞いたとき銀時は「なんて迷惑な奴なんだ」という感想を抱いた。だってそうだろう。自分が隠れたらどんな事態に陥ってしまうか分かっていながらの行動。周りが必死になるのを知った上でだ。ただの構ってちゃん。
そんな事が自分の目の前で繰り広げられたら周りの制止も聞かずにこの木刀で岩ごと岩戸を粉砕してやろう。箱入り娘の我が儘に付き合ってやるつもりはない。

…なーんて思っていたのはさっきまで。いざ自分の身内に同じことをされると困り果ててしまった。
頑なに閉じられた襖を見つめる銀時は顔を引きつらせ。

「おーい銀星くぅーん…。ちょ、頼むからここあけてくんない?」

力の抜けた声で話し掛けてみても反応が返ってくることはなかった。よもやの無視に更に気持ちが焦る。

「ええぇぇ無視!?いやいや無視はいけないよ無視は!いやーあのホラ、兄ちゃんが悪かった!謝るから許してぇ!!」
『………なにが…』
「っなになにどうした!?」
『何が悪かったと思って謝ってるの…?』
「…えーと、それはだなぁ…」

言葉が出てこない。
何か機嫌を損ねることをしただか言っただかして弟・銀星がこうなったのだと推測出来る。だからまぁとりあえず謝っとけ精神で頭を下げてしまった。どうやらミスったようだが。しかし蚊の鳴くような、震える声で話す弟に庇護欲がそそられる。ぎゅっと抱き締めてしまいたいが今そんな事をしたらきっと引っ掻かれる。我慢だ。

「(ちっげーんだよオレぇ!ンなこと考えてる場合じゃないだろ!いや、抱き締めたいけども!)」
『…兄さんの、ばかたれ……』

それでも嫌いとは言えない。

「あーうん、そうです兄ちゃんは大馬鹿者です。だからどうか、銀星が怒ってる理由を教えて下さいませえええ!!」
『………それは、』
「うんうんそれは!?」
「…銀さん、アンタ何1人でぶつぶつ言ってるんです?」
『!!!』
「新八、」

第3者の介入に息を飲んだのは1人だけ。加えて大袈裟に物音を立ててビクつくのだから彼が、たった1人の弟がどうして閉じこもっているのかようやく察しがついた。これはオレが悪いと頭をガシガシ掻いて俯く。お陰で元から自由奔放な髪型がより自由になったが気にしてはいられない。


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