※逆ハー狙いのトリップ主がいます。ほぼ逆ハー主とのやり取りがメインで京子ちゃんの性格が良くないです。

とんとんとん。
一定のリズムが早く刻まれる。爪先が苛立ちを表現するかのようにコンクリートの床を叩いていた。

「(いつまで待たせるつもりぃ?マジあり得ないんですけどぉ!)」

髪の毛を掻き毟りたいほどイライラするがどうにか耐える。せっかく綺麗に巻いたのだ、それを崩すのは勿体無い。何よりそんな状態を誰かに、というよりお気に入りのキャラクターたちに見られたくなかった。…いや、それもいいかもしれない。普段なら絶対に見せない乱れた姿。泣きながら縋りつけばきっと必要以上に心配してくれる。
もう待ち人を待たないでそうしてしまおうか?
いや、犯行に及んだと思われる時刻つまり今現在誰かと居たりしたらアリバイが成立してしまう。そして一気に向かってくる疑惑の瞳。離れていくみんなを想像して頭を横に振った。

「(それはダメ。嫌われたりしたら何の為にトリップしてきたか分かんなくなっちゃぅ)」

そんなバカなと人は笑うだろうが彼女・瑠奈はこことは違う異世界からトリップしてきたのだ。この世界が漫画として存在する世界。そこでこの世界に触れたその時からどっぷりとハマってしまい。それから毎日毎日願ってきた。トリップ出来ますようにと。欠かすことなく3年の月日を願ってきた彼女の下についに現れた神と名乗る者。今となってはアレが本当に神なのかは分からない。例え悪魔であったとしても構うものか。こうしてトリップ出来たのだから。
念願の逆ハー補正に戸籍に金持ちの親。夢小説で得た知識を総動員して怪しまれそうな部分は無くした。

補正のお陰もあってキャラたち、主に男のキャラクターは諸皆瑠奈を愛している。けれどもっともっと愛してほしい。溺れるぐらいに。
その為に今日、並中の屋上に呼び出したというのに

「まさかシカトしてんじゃないでしょうねぇ… …ん?」

ガシャンと緑のフェンスを掴み憎々しげに対面する校舎を見下ろせば人の姿が目に入る。雑多に物が置かれていることからそこが準備室だと分かる。が、何の科目のかは分からない。把握するつもりがないと言ってもいいだろう。
いや、そんな事よりあそこにいるのは

「笹川京子…」

瑠奈が呼び出した人物。そして今待ちぼうけを食らわしている本人だった。
自分を待たせているのに何をしているんだ。ムカッと来ながらグッとフェンスに張り付き睨むように眺めれば何やら様子がおかしい。そして誰かと一緒のようだ。
よもやキャラとではあるまいなと決して悪くはない目を凝らして見ると、一安心。キャラではない。
名前も浮かばないから恐らくは他クラスの男子。その2人が名も分からぬ準備室の窓際、壁に隠れるようにして何をしているのかと言えばー… セックスだった。

「っ!!」

性行為。不純異性交遊。愛の営み。
京子に覆い被さるようにして腰を動かし、首筋に顔を埋める男子生徒。その男の頭を、愛しそうに抱き控えめに喘ぐ京子は1人の女で。顔が熱い。それがどういう行為で、行われていくのかは知ってはいる。けれど自分で経験したこともなければ、こうして他人のセックスを見ることもなかった。
紙の上でも液晶の中ででの事でもない。今自分の眼下で起こっていること。耳を澄ませば生々しい音や声が聞こえてきそうだ。あまりの事に目を離せないでいるとバチッと京子と目があった。ひゅっと息を飲み込み、隠れなければ!と思うも一瞬。瑠奈が動くよりも先に京子が微笑んだ。それがどういう意味を含んでいるのかは分からない。その前に京子の唇を男子生徒が奪ったことで顔が見えなくなってしまったから。
だけど無性に、馬鹿にされたような気がする。
わなわなと怒りに震える手でスマホを取り出した。


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