歩き慣れた廊下から覗く海はとても穏やか。これが天気によってはとんでもない牙を見せるとは到底思えない。だが侮りも驕りもしない。そんな事をして死んでゆくのはいつだって人間だ。特に悪魔の実を食らったこの身は海に嫌われている。海に投げ出されれば最期

そうならないように気を付けてはいるが、人間は自然の脅威の前では無力。強大なサイクロンによって島1つが潰えた事例もある。故に腕の良い航海士は引く手数多。

「あの子がいれば、それも必要ないんだけどねェ〜」

数日前出会った占い師。全身を黒と赤の衣装で彩っていた彼女は実に優秀だった。結果通りにそれから4日後に雨が降り、海賊の潜んでいた島が姿を現した。その海域付近を警らしていればその島からまんまと出てきた海賊どもを一網打尽。
海軍が張っていた事に驚き混乱する奴らを討伐するのは赤子の手を捻るようだった。あれなら代金に色をつければ良かった。

まぁそれはそれとして。

彼女は本当に有能だった。いっそ勧誘したいくらいに。けれどそれを一歩踏み留まらせているのはこの胸の引っ掛かり。会ったことはない。確かにそうだと思う。いくら記憶を探っても出てこないのだから。ならば何故。討伐任務から帰還中ボルサリーノはずっとその事を考えていた。
そして1つの答えに行き着く。
それに決定打を加えるため新元帥への報告もそこそこに、ある人物の元へと足を向けた。

以前よりは重厚で無くなった扉を目の前に一息吐く。次いでノックした。

「センゴクさん、ワッシだよォ。ちょいと入っていいかねェ」
「ボルサリーノか。構わん、入れ」
「失礼するよォ」

音を立ててノブを回し入れば相変わらずのヤギがお出迎え。もう随分とこいつはセンゴクと共にいるがヤギの寿命は一体何年ぐらいなのだろうかとぼんやり考える。けれどそれも一瞬ですぐにこの部屋の主へと向き直った。

元・海軍総大将にして現大目付役のセンゴク。まったく、少しくらい余生をゆっくり過ごせばいいものを。

「どうした。何か用があるのか」
「まあねェ。センゴクさんに1つ聞きたいことがあってさァ〜」
「? なんだ」

首を傾げ不思議そうな表情をするセンゴクとは裏腹に、ボルサリーノは一層笑みを深くした。

「2年前の決戦の時、ポートガス・D・エースを逃がした女の特徴もっかい聞かせてくれないかァい」





×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -