靴を脱いで敷物の上に上がり、彼女に対面するように胡座をかく。鷹がじっとこちらを見てくるからニコリと笑みを返せば翼を広げて威嚇された。解せぬ。

『それで、何をお知りになりたいんで?』
「ワッシ、この服見りゃあ分かると思うんだけどね、海軍なんだよォ。それで最近この辺りを荒らして回ってるっていう海賊を討伐しに来たんだけどォ…。どうにも姿が見えなくってねェ。」
『なぁるほど。そいつらがどこに隠れてっか知りたいと』

相分かったと頷くと占いに使う道具の中から方角の書いてある紙とペンデュラムを取り出す。
それを床に敷きペンデュラムをその上に垂らして意識を集中させる。瞳を閉じて集中した意識のその先を覗く。靄に隠されたような島影がぼんやりと見えた。そういう事かと一つ頷いた。

占っている彼女を見ながら、もとい観察しながらどうにも何かが引っ掛かるとボルサリーノは内心頭を捻った。何処かで。何処かで彼女を見たことがあるような気がする。何処かの島でだろうか。であればこんな風に引っ掛かることも無い。何故ならそんな島で見かけただけの女を覚えている訳もないからだ。
ならば海賊の中に居たか?それも無い。それなら忘れる筈がないからだ。

そのどちらでもないとなると。一体何処で?記憶力はそこまで悪くないと思っていたんだがなぁ。いやいや決して老いではない。

『ちょっと、海兵のお兄さん』
「えっ? あぁ何だぁい」
『何だじゃねーよ、終わったから結果話すよっつってんの。飛ばした意識戻してーや』

ごめんごめんと頭を掻きながら謝ってくるボルサリーノにやれやれと息を漏らす。相手の意識がきちんとこちらに向いているのを感じて言葉を紡いだ。

『お探しの海賊はこの近海に身を潜めてるよ。場所はこの島から北北東に30qぐらい行ったとこ』
「北北東ならここに来るまでに通ったよォ」
『それは晴れてたからさ。海賊どもが隠れてる島はちょいと特殊でね。雨の日にしか現れない』
「オォ〜… 成る程ねェ」

天候のことまでは気にしてなかったが、確か資料にはそれも記載されていた。戻り次第確認して信憑性があるか見極めねば。事実であるならばまずは航海士に雨の日を調べさせてー…

『雨の日は今日から4日後。確認するもんして、すぐに出りゃぁ十分間に合うよ』
「…こっわいねェ。全てお見通しって訳かぁい?」

その言葉に彼女は笑うだけ。沈黙は肯定。ボルサリーノは片眉を吊り上げながら懐から財布を取り出した。そして提示された料金を支払うとゆるりと立ち上がる。
そのまま行ってしまうのかと思いきや、ピタリと立ち止まった。顔だけ振り向いて、

「ずぅっと思ってたんだけどさァ〜…。ワッシら、何処かで会ったこと無いよねェ?」
『おやぁナンパですか? 嬉しいけど、残念ながら会ったことは無いねぇ』
「だよねェ」

分かりきった事だが何故こうもモヤモヤするのか。首を捻りながらボルサリーノは自艦へと戻って行く。


嘘は言っていない。2人は会うのは今日が初めてなのだから。





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