やれやれと、海軍大将が1人黄猿ことボルサリーノは肩を竦めた。近頃この海域付近を荒らして回ってるというドロワ海賊団。それを討伐しに来たはいいがどうにもとんと姿を見せない。大将が討伐にやってきたのを聞きつけたか。恐らくはほとぼりが冷めるまで姿を現しはしないだろう。小賢しい。

何処かの無人島にでも身を潜めているのだろう。しかしこちらとてこのまま帰る訳にはいかない。大将が出てきたというのに討つどころか何の情報も得られぬまま引き下がるなど。今の元帥にマグマグされてしまう。ヤられるつもりは更々無いが。

「どォしたもんかねェ〜…」

とは言うが宛はない。
目撃情報の多い島にとりあえず寄港して情報収集と物質補給を行う。耳寄りでも信頼度の高いものでもいいから何がしか入手したい。どちらも連れてきた海兵に任せてはいるが、自らの足でも動いて集めに行く。部下にばかりやらせない良い上司… 等という事ではなく。ただ単に船で待っているのに飽きたのだ。サボりではない、断じて違う。仕事を兼ねた気分転換だ。上手い言い回しが見つかった。

その仕事兼気分転換のお陰で面白い話を聞くことが出来た。若い女の子がきゃっきゃっと話しているところに突撃してみれば今この島にはとんでもなく当たる占い師が居るんだとか。

恋愛はもちろん、人探しから憑き物まで視てくれる。きゃぴきゃぴとしながら「おじさんも1回行ってみたら〜」と言われつい鼻の下が伸びてしまった。たまにはこうして若い女の子と触れ合わないとねェと心の中で呟いた。
けれど結局有力な情報はナシ。島民たちも不定期に現れては悪さを仕出かしてゆくドロワ海賊団にほとほと困り果てている様子。この近くを根城にしていることは確かなようだ。うぅん、とボルサリーノは小さく唸ってからその足をバザールへと向ける。先ほど話に聞いた占い師に会ってみる事にしたのだ。噂が人を呼んで最近では他の島からもわざわざ人が訪れるとか。

占いなんてモノを信じちゃあいない。そんなんじゃぁ海軍大将なぞ務まる訳もない。ならば何故向かうのかと言うと、言った通りこれは気分転換も兼ねている。やらない事をやってみるのも良いだろうと判断したのだが。

「オォ〜… 思ってたよりわっかいねェ」
『もっとババアかとって?一応腕は確かだから安心したって』

にやりと笑う女は、闇に溶け込むような真っ黒な衣装を身に纏っていた。差し色の赤がやけに印象に残る。傍らには大きな鷹。店構えも随分とエキゾチックでなかなか雰囲気はある。けれど実力はそれでは測れない。

占ってもらおうかどうしようか。本人を目の前にしながら悩んでいると1人2人と後ろに並び始めた。…これでは今更帰りようもない。まぁ人が並ぶということは評判が良いという事だ。当たるも八卦、当たらぬも八卦の心構えで行こう。




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -