『人探し、ですか』
「はい…。そういうのも占って頂けますでしょうか?」
『大丈夫、やりますよ。お探しなのは息子さんですね』
「…!そうです、3年前旅行に行くと言って出掛けたっきり…っ」

声を震わせながら話していたご夫人はついに涙を流した。ハンカチで拭いながらも気丈に聞かせてくれたのは、その息子と夫のこと。

少しぶっきらぼうな所があるけれど明るくて、不器用な優しさを持っていて。自慢の、可愛い子だった。その子が3年家に帰ってこない。マリンフォードを、海軍本部を見に行ってくると。道中は心配だがマリンフォードだけなら平気だろう。もしかしたら感化されて志願するかもしれない。そう笑って出て行ったのに。

昨年から夫は体を壊してしまった。医者もあまり長くはないと言っている。夫本人も死を受け入れていた。ならばせめて最期に息子に会わせてあげたい。最悪なことになっているというのなら、せめて遺骨を迎えて。夫と一緒に眠らせてあげたい。
その一心で最近よく当たると噂になっている六月一日の元へ来たのだ。

『ちょいとお待ち下さいね』

言って、タロットカードを切って並べる。出たカードは死神に戦車。あぁ判っとったけど。最悪な結末じゃねーか。更に頭に浮かぶイメージにはヨーロッパの海獣、リヴァイアサン。そうか成る程。海王類に食われたか。そう、帰りに、船を襲われて。即死だっただけまだマシだろうか。いや、死んでしまったのだ。マシも何も無い。

そう視えた結果を偽ることなく下手に遠回しにするでもなく夫人に伝えれば静かに涙を一筋流し。何となく判ってはいたのだ。3年音沙汰も無い、何処かの島で見たという話も聞かない。海軍に問い合わせてみてもそんな海兵はいないと言う。生きていると信じたいが、そうなると、もう…。
そこへ当たると評判の彼女が、息子の死を告げた。まだ心の何処かでもしかしたらを期待している自分居て嫌になる。

いずれ夫も死に、そして息子も亡くなってしまった。これから1人でどうして生きて行けようか。

『俯いて地面ばっか見てちゃいかんよ。ちゃあんと前向いて生きて行かにゃ。旦那さんと息子さんとこ逝くときに土産話が無いとね』
「そう… そうね…。ありがとうございます」

1人で生きていくのは寂しいだろう。
けどだからと言って後を追ってはいけない。胸を張って大往生出来るほど命を生きねば。ありきたりな言葉だがその方が夫と息子も喜ぶだろう。

代金を支払って何度も頭を下げて帰ってゆく夫人を見ながら少し考える。振っていた手を降ろし腰布に挿しとった銀色の小さな筒を手に取った。彼女の依頼は息子さんを探すこと。なれば見つけるまでが仕事だろう。






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