彼の後ろから顔を出すように店を覗けば真っ青な衣装を身に纏った、自分とそう歳の変わらない女が1人。異国情緒溢れる敷布や装飾品に囲まれて座っていた。
女の横には大きな鷹が1羽、止まり木に留められていて。何故だか少し萎縮する。

『いらっしゃいお兄さん。どういった用向きで?』
「これ!この宝の地図が本物か見てくれ!」
「ちょっとルフィ!」

そんな事を言って、嘘を吐かれたらどうする。自分がそれを欲しいからと真実に宝の地図なのに偽る輩はこの海にはごまんといる。
彼女がそうとは限らないがそうとも限る。初対面の人間だ。まずは疑ってかかるのが普通だろう。だというのに、ナミのそんな心配を知ってか知らずかにかっと笑うとひょいと地図を渡してしまった。
あぁあこの馬鹿なんてことを!!

『また変わった用件だねぇ…。まぁいいか』

吸っていた煙管を横に置くと傍らに揃えておいた道具を一つ手に取る。ルフィやナミにはそれの名称はもちろん使い方も分からない。どうするのかとやや不安を交えながら見ていると字や図柄の描かれた丸いシートのようなものを床に置いた。

それは占星術ホロスコープというもので。それと合わせて使うペンデュラムを取り出して右手で吊るすように石の切っ先をホロスコープに向けた。

息を一度。深く吐き出すと手に指先にペンデュラムに意識を集中させる。女の纏う空気が変わったのを肌で感じナミはごくりと生唾を飲み込む。地図を掠め取られたら、とか、そもそも当たるかどうかも疑わしいとも思っていたがそんな心配は無用だと直感した。
彼女は、当たる。
相対して間もなくとも真に優れ偉大さを孕む人種というのは本能で察してしまうというもの。偉大さは伺い知れないが、この占い師は確かにその枠組みに入る。少なくとも“占い師”のカテゴリーの中でならまず問題なくトップクラス。

こんな何でもないような島にとんでもない者が居たもんだ。だから世の中は恐ろしい。ナミがそう考えてる間も占い師は手を進める。中心に描かれたyes/noのyesの上でペンデュラムがくるくると回る。うん、と一つ頷いた。

『本物で間違いないね。ただ視た感じこの地図にゃまだ仕掛けがありそうだけども』
「仕掛け?どんなのだ??」
『そこまで言っちまったら楽しくないっしょ?お兄さんの好きな冒険にはそれも含まれてんだから』
「そっか、それもそうだな!よーしサニー号に戻って作戦会議だ!!」
「こら待ちなさい!まだ代金払ってないでしょうがっ」

勢いと己の感情のままに行動しようとするルフィの襟首を掴んで力づくで引き止める。
恐らく彼女の視た結果とやらは当たっているのだろう。だからこそ代金を払うのは仕方ないが一体幾らふんだく… 要求されるのか。正直占いなんてものはしたことがないので相場が分からない。ブティックなら分かるし、値切れるのだが。あんまりな高額ならばそれもやぶさかではない。

けれど彼女はまたもやナミの予想を裏切る。

『お代は今回はいらんよ。ただ… そうだね。次に会うことがあんならそん時飯の一つでも奢ってよ』
「わかった!」

にっかりと眩しいくらいの笑顔を見せて今度こそルフィは走って行ってしまう。ナミの非難の声もなんのその。呆れと怒りを抱えながらふと彼女を見る。目が合えば小さな会釈を。それに返してナミも走り出して、小さな疑問が生まれた。
彼女に、ルフィは冒険が好きだと言っただろうか?





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