白ひげ海賊団の象徴とも言える白鯨を模した船。モビー・ディック号。1000人ものクルーを乗せるその船はこれ以上ない程に巨大で。これを目の前にすると何て自分はちっぽけなんだと思ってしまう。まぁ事実人間なんてみんなちっぽけなんだが。

2年ぶりの再会を果たせばみんながみんなエースに寄ってきて。もみくちゃにされて苦しい思いをしたが心は満たされていた。人と、家族と触れ合えることの喜び。何より嬉しかったのはあの偉大なる親父ことエドワード・ニューゲートにハグしてもらえたこと。
すごく、すごく嬉しくて照れくさくて。もう完璧にコントロール出来るようになったと思っていたのに思わず火を吹いてしまった。

兄弟たちに笑われるのも懐かしくて不貞腐れる暇もないくらいだ。そうしてそのまま、まだ昼間だというのにエースの帰還を祝う宴が開かれる。注がれた酒を飲み干せばまた注がれ。みんなエースを構いたいのだ。何せ2年前の戦争の後程なくしてエースは修行に出ていたから。

「どうしたんだよい、手が止まってンぞ」

酒を、食事を採る手を止めて周りの賑わいをぼんやり眺めていると一番隊隊長のマルコが声を掛けてきた。やはり手には酒。酒を見ると彼女を思い出す。2年前の戦争の日。
結果的に自分を助けた主犯となったその彼女、六月一日。こちらを見たまま固まった者も当然居たので六月一日のことを根掘り葉掘り聞かれた。そしてエースも包み隠さず話し。大恩人だ、隠す必要もない。それに彼女がどれだけスゴい人間かを伝えたかった。自慢したかったのだ。彼女とのことを。でも。

「会えねぇなあと思って」
「誰にだよい」
「六月一日。オレを助けた恩人」
「あぁ、あのよく分かんねぇ術を施したっつー…。夢で、会えてたんじゃなかったかぃ」
「そうだったんだけどなぁ」

あれから2年。あの日からただの一度も彼女に会えていない。どうせ夢で会えるからと“またな”と言って別れたのに。

なぁ何処にいるんだ。まだあの日の礼も言えていない。





×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -