遥か水平線の彼方にあった船影がじわりじわりと近付いてくる。次第に大きく、はっきりと見えてくるそれに心が踊った。たった2年。されど2年。離れ、懐かしむには十分な時間だった。

マリンフォードでの戦争から2年。彼女の手助けもあって無事その首を繋げたまま白ひげ海賊団へと帰還した。けれど己の弱さを痛感したエースは弟のルフィと共に冥王シルバーズ・レイリーの元で修行に励んだ。白ひげの元で強くなればいいと沢山の兄弟たちに引き留められたのもいい思い出。でもそれではダメなのだ。心が甘えてしまうから。
それに少しだけあの男の、実父のゴール・D・ロジャーの元クルーにしてその右腕であるレイリーにも興味はあった。

父の印象を良いものにしたいとか、そういう気持ちがあった訳ではない。ただ純粋に海賊王という地位に登り詰めた1人の男の冒険譚が聞きたかった。さぞや様々な苦難を乗り越えてきたんだろうと思っていたが、それを上回るほどで。毎日毎晩、寝物語のように聞いていたけれどたった2年では全てを聞くことは出来なかった。

「相変わらずデッケーなーぁ!エースんとこの船はっ!」
「まぁな。クルーを1000人も抱えてんだ。ありゃぁもう船っつーより家だな!」
「家か!ニシシシシ!」
「ルフィ、そろそろ…」
「 ! おうっ」

レイリーと修行している間、散々世話になったボア・ハンコックがそっとルフィに声をかける。仲間と落ち合う約束をしたシャボンディ諸島に行くのだ。故にエースとルフィはここで別れることとなる。かの広大な海で次はいつ会えるか。分かるハズも無いが、必ず会えると信じている。お互い目指すものは同じなのだから。

2人の間に言葉はいらない。何せ盃を交わした兄弟なのだ。その絆は血の繋がりより強い。見つめ合って笑うと、拳をごつりとぶつけ合った。

「じゃあなルフィ。生き残れよ?」
「当たり前だ。エースこそ、もう海軍なんかに捕まんなよ!」
「分かってるさ。その為に強くなったんだ」

まだ、たった2年前の出来事。今でも鮮明に思い出せる断頭台からの景色。自分を呼ぶ大勢の仲間たち。切り伏せられて行く姿。鮮烈な青。あんなただ見てるだけの歯痒い思いなど二度とごめんだ。
だからこうして2年間、家族と離れてまで修行に励んだんだ。守られるのではなく守る為に。

もう一度名前を呼ばれ今度こそそちらへ歩いて行ってしまうルフィ。あんなに小さくて自分の後を付いてばかりだった弟が立派な背中を持つ男になって。アイツなら本当に海賊王になるかもしれない。いいや、海賊王になるのは白ひげ。エドワード・ニューゲートだ。
ルフィはさぞや良いライバルになるだろうなぁと1人思った。





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