六月一日の姿の事だろう。先日インペルダウンに姿を現した際は看守の気を逸らすだけだったので姿を見えないようにすることは出来た。
だが今回はこれだけ大規模な足止めを施しているのだ。己の事までは気を回せられん。そう伝えればエースは納得したのか頷いた。視線をセンゴクに戻し彼女はにっこり笑う。

『手前はしがない占星術士にございます。此度此方の御方と御縁ありまして御助力いたす事と相成りました。何卒御容赦を』
「容赦だと…!?貴様、自分が何を、しているのか…っ分かっているのか!」

少しずつではあるが口が正常に動くようになっている。なんとまぁ由々しき事態。一つまともに動くようになればまた一つ動くようになっちまう。手は抜いていない。となりゃお上がお怒りだという事だ。知るか。ことこの件に関してはとことん歯向かってやると決めた。邪魔はしないでもらおう。口悪く言うなら引っ込んでろ。

『さりとてもののふどもはゆるぎをとめ』

センゴクから目を離し人々を見やる。何事かを呟けば僅かに動き出していた何人かの体がまたもやぴたりと止まった。しかしこれも束の間だろう。
なればこの機会を逃す手はない。

『エースくん、今のうちに家族のとこへお帰り』
「お前は」
『私は行けんよ。実体じゃねーし危害も加えられんさ。弟さんの首根っこ掴んで行きんさい』
「…判った。けど、一応気を付けろよ」
『はいよ』
「六月一日」
『ん?』
「またな!」
『おう』

あの太陽のような笑顔を見せて大きく手を振る。あまりの眩しさに目が眩む。まったく、その笑顔で一体何人もの人間を落としたんだか。彼のようにとはいかないが笑って手を振り返しゃ満足げに頷いて処刑台のてっぺんから飛び降りた。
おおなんという運動神経。私にゃ真似出来ん。

エースの放った"また"が胸に染みる。次がありゃいいんだがね。

『友人を助けたいと思い行動することの何が悪いっつーんかね』

大人の考える事は判らんと、大人とも子供とも取れない歳の彼女は思うのです。

じわじわと体が消えていく。それを気にせずエースを目で追えば 六月一日の言葉を真に受けたのか弟の首根っこを掴んで走り出していた。ふふ、と声が漏れる。
走って走って走って。やっと白ひげの元に辿り着いたエースはルフィを離すと一度処刑台を見る。
そこにはもう蒼はいなかった。





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