けたたましい雄叫びがそこかしこで上がる。その様は正しく頂上決戦。古い時代が終わり新しい時代が訪れようとしている。
この戦いの発端は今日処刑執行されるエースを救おうと白ひげ海賊団及びその同盟たちが押し寄せてきた為。迎え撃つ海軍との衝突とは想像を遥かに越えていた。多くの仲間が死に、同じぐらい海兵たちも息絶えて。

ほんの数ヶ月前まで笑い合っていた兄弟たち。それが物言わぬ屍へとなってゆく。彼らとの思い出がまるで昨日の事のように浮かぶのに、その彼らはもうピクリとも動かない。どうして、なんで。助けになんか来なければ死ぬことも無かったのに。疑問に思うけど心のどこかで嬉しさが勝る。
見捨てないでくれた、傷ついて尚助けようとしてくれている。涙が溢れて止まらない。視界がぼやける。けれど目の前の光景から顔を背けはしなかった。敵も味方も関係なくここで繰り広げられる全ての命のやり取りを眼に焼き付ける。

雄叫びと剣戟の間に聞こえる己を呼ぶ声。嗚呼、嗚呼どうしてそれに応える事が出来ないのか。

「親父…!ルフィ、みんなぁ…っ」

何故自分の周りの人たちはこうも自分に優しいんだ。白ひげの制止も振り切って、ティーチを追い掛けケジメをつけようとしたのは自分で。それがこの結果を招いたのだ。自業自得としか言いようがない。だからこそ責任を取るじゃないが自分の尻は自分で拭う為こうして処刑されようとしていたのに。なのに、白ひげはそれらを全て自分の指示だったと。

何もエースは悪くないと。あの男の優しさと器の大きさに目頭が熱くなった。

やはり俺は白ひげを海賊王にしたい…!

こんな所で終えさせる訳にも、散る訳にもいかない。どうしようもなかった俺を拾い、育て、愛してくれた家族とここで別れたくはない。まだまだ生きなければならないんだ。
エースの瞳に、生きる意志に焔が灯った。

がしゃり。後ろ手に縛られている海楼石の手枷を外そうともがけば音が鳴るだけ。純度の高いものを使っているのだろう。気分は最悪だ。だがそんなのはどうてもいい。吐き気を無視して鎖を外そうと躍起になる。

「うわぁっ!」
「 ! ルフィ!!」

弟の苦しげな叫び声が上がる。バッと弟の姿を捜せば背中を海兵に斬られていた。何油断してるんだ、もっと周りを見ろって言ったのに、一兵卒如きに、ダメだ考えが纏まらない。
自分が近くに居れば助けるのに。背後なんて取らせないのに。声にならない声を上げて、エースは深く深く頭を垂れた。ごつりと、処刑台に額をぶつける。食い縛っていた歯を口をゆっくり開けた。

「……頼む、助けてくれ…!六月一日…っ」



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