ぱちくり。と目を瞬く。咄嗟に彼女を凝視すりゃあ鼻を摘まんでいた手が離れ。その手が今度はエースの眉間のシワを伸ばすように当てられた。

彼女の言葉の意味を段々と理解してゆく。断った。更なる飲みの誘いを。エースが待っているからと。だから。頬と耳が熱い。この夢の世界は基本的に薄暗いがそれでもこの顔の赤さは判ってしまうだろう。彼女の手から逃れるように一歩後ろに下がり、手で口元を覆った。
目も合わせられず泳がせるがそれでも彼女が笑う空気は伝わってくる。

『ホント、可愛いねえ』
「…っ男に!可愛いとか言うな!」
『ふ、そう怒らんとってよ褒めてんだからさ。…ああそうだ。何ぞ急ぎの用があって私を探しとったんじゃないの?』

話を逸らす、つもりではなかったが必然的にそうなってしまった。誤魔化されないぞとばかりに睨み付けるがついには煙管を取り出してしまい。腑に落ちない思いを抱えながらもエースは口を大きく開き、息を吐き出す。気持ちを切り換えよう。

ニッと快活そうに朗らかな笑顔を浮かべた。

「久しぶりに弟のルフィに会ったんだ!」
『あぁ、小さい頃一緒に育ったっていう…。一人前になってた?』
「いーや、まだまだ半人前だな。だがいいクルーに恵まれたみたいだ」

砂漠の国で数年ぶりに再会した弟の話。そうだずっとこれを聞かせたかったんだ。時間の許す限り聞いてくれ。





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