さて、それから幾日かが経った。国主として政務に追われながらも己が最も熱を入れとる絡繰り作りに精を出して。夢の事なんぞ忘れ。一日を終え床につき、そしてまた同じ夢を見て頭を抱える。そんなんを繰り返しとったあくる日。元親の耳に家臣が口にしとった噂話が入りおった。
「なぁ知ってっか?今城下町にえらい良く当たるってぇ噂の占い師が居るらしいぞ。」 「占い師ぃ? また胡散臭ぇな。」 「まぁな。でも実際よく当たるんだってよ。男女の色恋は勿論、何も言ってねえのに悩み事を言い当てちまったり…。失せ物も見つけてくれるってよ。」 「失せ物って占い師か?」 「知らね。」
盗み聞きするつもりはなかったが。結果そうなってしまったそれに聞き耳を立てる。さすればその占い師は女で矢鱈目立つ身なりをしとるとか。そんな話を聞けた。
曲がり角に身を潜めておれば家臣達の雑談は話題を変えちまって。そこで元親はふむと顎に手を当てて考えた。占い師、占い師か…。盲点だった。確かに世の中にゃそんな肩書きの人間が居ったわな。 坊主や神子なんかよりも尚更得体は知れぬ。しかし噂となってこの城の中にまで入ってくるんだ。それなりに信じてみてもいいやもしれん。まあ噂っちゅーもんは尾ひれが付きまくるもんだから。何処までが真実かは判らんが。 一度会ってみようか。無論夢の事でだ。判らんと言われてもそれでも良し。元から期待はしとらんのだ。ちぃと何か判りゃ上々。そこから解決の糸口に繋がれば大助かり。
さあそうと決まりゃ着替えにゃ。派手な見目をしとるから町人を装ったってすぐ身が割れちまう。けれど何もせんかったらそれはそれで浮いてしまう。そう考えながら、元親はどの着物にしようか等と思った。
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